没入体験を演出する展示デザイン

アトリエ・ブリュックナーが、ドバイで有名な訪問スポットで来場者を未来的な探検へと誘う未来博物館の3フロア、3,000平方メートルに及ぶ展覧会「パイオニアたちの旅（Journey of the Pioneers）」のデザインを手がけた。

Museum of the Future - Architecture
Photo credit: Daniel Stauch

Level 3 - Al-Waha
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

博物館の各フロアは、宇宙での生活、生物工学と損傷した生態系の再生、そして個人の幸福など未来のビジョンに焦点をあてた印象的で力強い空間的な物語が展開され、その世界への没入体験ができるように作られている。

キラ・デザインによる煌めくシルバーのリングの建物は極めて印象的で、その外壁は螺旋状のカリグラフィーで装飾されている。ドバイの賑やかなシェイク・ザイード通りに沿って天に向かって伸びる高層ビル群を車で通り過ぎる人々の目を引くデザインで、「未来はそれを想像し、設計し、実行できる人々のものである。未来は待つものではなく、自ら創造するものなのだ」と述べているよう。

Level 5 - OSS Hope
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 5 - OSS Hope
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 5 - OSS Hope
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

館内は未来への挑戦を示す3つの章に分かれた作りで、来館者は刺激的で爽快な体験に引き込まれる。「パイオニアたちの旅」展では来館者を高速宇宙カプセルで2071年へと誘い、OSSホープ宇宙ステーションへと連れていく。そこでは宇宙での架空の、しかし非常に現実的に描かれたミッションに乗り出すパイオニアたちが募集されており、太陽エネルギーを利用して人類に電力を供給し、そのエネルギーを月から採取して地球に伝送することがミッションとして課せられている。

LEVEL 5 - OSS Hope
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 5 - OSS Hope
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

2071年の世界では多くのプロジェクトが実施され、より持続可能な場所へと変貌を遂げている。例えば、カイロはグリーンシティとなっており宇宙ステーションのブリッジから地球の全景が一望できる。一方でOSSホープの基地局があるアマゾンの熱帯雨林は森林火災に脅かされている。そこで来館者は、現在の課題とプロジェクトの概要を説明され、体験の最後に募集ステーションに登録し貢献するよう促される。

Level 4 - HEAL Institute
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 4 - HEAL Institute
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 4 - HEAL Institute
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 4 - HEAL Institute
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

旅の第2章では来館者は地球に戻った設定で、展示レベル4にあるHEAL研究所が、バイオエンジニアリングを通じて生態系の再生と癒しに貢献するパイオニアとなるよう来館者を鼓舞する。来館者は地球上の自然の美しさに浸り、熱帯雨林の生命がいかに相互に連鎖しているかに気づく。

次の空間「図書館」では、来館者は圧倒的な雰囲気に魅了される。レーザー彫刻が施された2400個のクリスタルの瓶には、哺乳類や植物から単細胞生物まで2071年までに生存または絶滅した種が展示され、白衣を着た人々が特別な装置を用いて瓶を調査している光景が広がる。「天文台」にある孵卵器には研究所の科学者が2071年に取り組んでいる多数の研究プロジェクトが展示されている。耐火性樹木、種子爆弾、脂質が豊富なキヌアの開発などはほぼ完了している。

Level 3 - Al-Waha
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Level 3 - Al-Waha
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

旅の第3章として、パイオニアたちが自分自身と出会う場所「ALWAHA（アルワハ）」が設定されている。来館者が自分の感覚を発見・再認識し、テクノロジーがますます発達する環境の中で、未来が幸福で健康な空間となることを目指している。来館者は、中央に噴水のあるエントランスからリラックスした癒しの空間へと促され、斬新な技術を使ったセラピーを受けることができる。「ムーブメント・セラピー」では来場者は歩き回り探索し、動くことがいかに回復やリフレッシュ、喜びの助けになるかに気づく。風と波のリズムに合わせて踊り、リアクティブ・プロジェクションに浸り、足元には渦巻く砂の渦が続いていく。そして最後の体験である「センター」には、瞑想、減圧、リラクゼーションの空間が広がる。来館者は頭上のドーム、周囲の壁、そして自分自身に投影される、水を通して屈折する光の美しさを見つめしばし没入できる。

Future Heroes Exhibition
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

Future Heroes Exhibition
Photo credit: Giovanni Emilio Galanello

本展は完全に没入型の体験として設計・制作されている。誘導灯と素材の選択は、感覚的な体験に重要な役割を果たし、宇宙ステーションの壁は3Dプリンターで作られたメッシュが織り込まれ、小惑星から採掘された素材で作られているように見える。HEAL研究所の壁は持続可能な籐ヤシでできており、アルワハの壁は粘土でできている。すべてのディテールは、全体的な体験における役割を見据えて精密に考案され、作られている。

アトリエ・ブリュックナー /ATELIER BRÜCKNER

ドイツのシュトゥットガルトと韓国のソウルにオフィスを構える、130名のプロフェッショナルを擁する世界有数の展示デザイナー。ミュージアム、ブランド、ビジターセンターのために物語性のある空間を創造し、永続的な体験を生み出すためにエモーショナルなコンテンツを伝えることに重点を置いている。