都市と公共空間をつなぐ次世代地下鉄計画

トリノの新たな地下鉄路線「メトロ2号線」の設計提案がオランダ・アムステルダムを拠点とする建築設計事務所UNSによって発表された。本プロジェクトは、建築家ベン・ファン・ベルケルとキャロライン・ボスが率いるUNSが中心となり、都市インフラを単なる交通手段としてではなく、都市の公共空間として再定義する試みとなる。 本計画はイタリア・トリノの都市構造と歴史を背景に、現代的な都市体験へと再構築することを目的としている。

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-6

Exterior of San Giovanni Bosco, Turin Metro Line 2
Photo credit: Produced by HISM, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

都市の流れを再構築するメトロ計画

UNSを中心にSettanta7、Mijksenaar、Frigorosso、3BA、WSPが参画した本提案は、建築家ドミニク・ペローを審査委員長とする国際審査において選出された。審査員は本計画を、地下鉄を都市形成の一部として再解釈した点で高く評価し、モビリティと公共空間、都市文脈の関係を強化するデザインであると位置付けた。トリノの都市構造は、ポー川やドーラ川、そして約18kmにわたるポルティコ(列柱回廊)によって形成されている。本計画ではこれらの流れを「都市の川」として再解釈し、メトロ2号線を都市・歴史・世代をつなぐ新たなインフラとして位置付けている。

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-4

Mole Giardini Station.
Photo credit: Produced by HISM, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-2

Carlo Alberto Station.
Photo credit: Produced by Settanta7, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

歴史と対話する現代建築

トリノは産業都市としての歴史と、文化・創造都市への転換を経てきた都市である。本計画のコンセプトは「移行」であり、アーチからポルティコへ、曲線から直線へと変化する建築言語として表現されている。外観はトリノ特有の幾何学的で抑制されたファサードを踏襲しつつ、内部空間ではより豊かで温かみのある空間体験を創出する。この対比により、歴史的文脈と現代建築の関係性を明確に示している。

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-1

Carlo Alberto Station.
Photo credit: Produced by Settanta7, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

柔軟性を持つモジュール設計

全32駅からなるメトロ2号線は、異なる都市条件に対応する必要がある。初期段階では10駅の設計が進められており、モーレ・ジャルディーニ駅、サン・ジョヴァンニ・ボスコ駅、カルロ・アルベルト駅など、多様な立地に対応する柔軟なモジュール設計が採用されている。UNSは3つの階層によるアイデンティティ設計を導入した。

  • ネットワークアイデンティティ
  • システムアイデンティティ
  • ステーションアイデンティティ

これにより、路線全体の統一性と各駅の個性を両立させている。ブランドデザインは、トリノの山岳地形、ポルティコ、水の流れをモチーフとし、黄色やオーカーから緑、青へと変化するカラーパレットによって表現される。また、このビジュアル言語はサイン計画だけでなく、デジタルアプリケーションや広報活動にも展開される。

新しい都市としての駅空間

本計画では地下鉄を単なる移動空間ではなく、連続する公共体験として設計している。地上では都市と調和する明確な存在感を持ち、地下では「宝石箱」のような空間として展開される。乗客体験は、チケット購入から移動、乗車まで一連のプロセスとして設計され、デジタルと物理空間を統合したシームレスな移動体験を提供する。アルミニウムや磁器質タイルなど耐久性の高い素材を採用し、拡散光による照明計画が快適性を高める。また、テラゾー風の床やサイン計画が歴史性と現代性を結びつける役割を担う。これらの設計により、直感的で快適かつ記憶に残る地下鉄空間が実現される。

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-3

Mole Giardini Station interior.
Photo credit: Produced by UNS, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

adf-web-magazine-beneath-the-porticoes-5

Mole Giardini Station interior.
Photo credit: Produced by HISM, ©Extraordinary Commissioner Chiaia

ベン・ファン・ベルケル

オランダの建築家。UNS創設者。建築、都市計画、インフラデザインを横断するプロジェクトを手がけ、革新的な設計アプローチで国際的に評価されている。

UNS

1988年にベン・ファン・ベルケル(Ben van Berkel)とキャロライン・ボス(Caroline Bos)によってオランダ・アムステルダムで設立された国際的な建築設計事務所。建築にとどまらず、インテリアデザイン、プロダクトデザイン、都市開発、ランドスケープ、ユーザーエクスペリエンスまで横断的に手がける。アムステルダム、上海、香港、ドバイ、フランクフルト、メルボルン、リヤド、オースティンに拠点を持ち、グローバルに活動する。革新性、独自性、持続性を重視した設計で、現代都市に新たな価値を提案している。