秋元雄史キュレーションのもと「工芸的アプローチ」を通じて現代美術の新たな視座を提案
趣都金澤が主催する「GO FOR KOGEI」は2020年から北陸を拠点に工芸的アプローチから現代美術を再考するプラットフォームとして展開してきた。第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の開催にあわせ、本展「身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」をイタリア・ヴェネチアのパラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナで2026年5月9日から11月22日まで開催する。本展はGO FOR KOGEIアーティスティックディレクターであり、本展キュレーターを務める秋元雄史のもと、「工芸的アプローチ」を批評的なレンズとして用い、現代美術そのものを読み替える試みである。

『身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ』キービジュアル コムロタカヒロ《Dog dragon》2023年 Photo: Takashi Ito (ito-kobo inc.)|デザイン:bruno
コンセプト
情報と消費が加速度的に循環する現代社会において、本展は「つくること」に内在する、もう一つの時間感覚と身体的知覚に焦点を当てる。ここでいう「エスノグラフィー」とは、素材に向き合い、手を動かし、時間をかけて制作する行為そのものを、文化的かつ社会的な実践として読み解く視点を指す。陶、ガラス、漆、繊維、木彫、刺繍といった多様な素材を扱う10名の日本人アーティストの実践を通じ、速度や即時性を重視する価値体系に対し、「遅さ」と「深さ」がもつ批評性を提示する。
会場と展示構成
会場となるパラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナは、ヴェネチアの都市構造と生活文化を現在に伝える歴史的建築である。本展では空間をホワイトキューブ化せず、建築に刻まれた時間や素材感をそのまま展示の前提として引き受ける。展示構成を手がけるのは建築家 クラパット・ヤントラサスト。足場(スキャフォールド)を用いた仮設的構造によって、高低差と多方向の動線を生み出し、鑑賞者の身体的移動と視点の変化を促す。完成された展示ではなく、生成し続ける場としての展示空間が立ち上がる。
アーティスト紹介
沖 潤子
反復的な刺繍によって、生活の時間と身体の記憶を布に縫い込む。家庭的空間に展示される作品は、静かな労働の蓄積を可視化する。
川井雄仁
過剰な色彩と量感を伴う造形で、欲望や虚構を陶に投影する。流動性をもつ陶磁作品が、消費と不安定さを露わにする。
桑田卓郎
貫入や破損といった「失敗」を積極的に引き受け、完成と崩壊のあわいを示す。建築の経年と呼応する彫刻的陶芸を展開する。
コムロタカヒロ
ソフビ玩具やポップカルチャーを起点に、崇拝と消費の境界を揺さぶる像を制作。足場とともに立体的な鑑賞体験を生み出す。
シゲ・フジシロ
膨大な手作業によるビーズ作品で、都市と労働の時間を表層に刻む。光と装飾性の背後に社会構造を映し出す。
舘鼻則孝
伝統技法を用いた《Heel-less Shoes》を通じ、装いと身体、儀礼と時間の関係を再構築する。

舘⿐則孝《フローティングワールド》2024年 Photo: Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA[参考]
中田真裕
幾層にも重ねられた漆によって、時間と記憶の沈殿を可視化する。簡潔な造形が物質内部の深度を際立たせる。
三嶋りつ惠
ムラーノ島の職人と協働し、光そのものを彫刻化する。建築と一体化した光のインスタレーションを展開する。
牟田陽日
色絵によって女性像や自然観を再解釈する。山姥を主題に、身体と自然の両義性を浮かび上がらせる。
綿 結
糸を撚り、織る工程から立体を構築する。重力と空間を内包する繊維彫刻が、建築全体と呼応する。
「身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」開催概要
| 会期 | 2026年5月9日から11月22日まで |
| 時間 |
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| 会場 | パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナ(ヴェネチア) |
| URL | https://tinyurl.com/d2hm9r9j |

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