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グッゲンハイム美術館「Countryside, The future」展レポート

現在、グッケンハイム美術館では「Countryside, The Future」展が開催中だ(*現在、新型コロナウィルス のため休館中)。本展では、オランダのロッテルダム生まれの建築家、アーバンプランナーのレム・コールハース(Rem Koolhaas)氏と彼の建築設計事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)のディレクターSamir Bantal氏によって大都市以外の地域(以下、countryside)での急速な環境、政治、社会経済の変化が様々な展示手法で紹介されている。

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Photo by Luca Locatelli. All images courtesy of OMA.

レム・コールハース氏はElia氏、Zoe Zenghelis氏、Madelon Vriesendorp氏と建築事務所OMAを共同主宰し、カタールの国立図書館やシアトルの中央図書館、中国の中央電視台本部ビルなど数多くの世界の建築を手がけてきた。ニューヨークでは、昨年、ニューミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートの別館をOMAのパートナーである重松象平氏とデザインすることを発表し話題となったことは記憶に新しい。

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レム・コールハース / Rem Koolhaas

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ニューミュージアム本館と別館のイメージ

また彼は建築家としてだけではなく、様々な都市建築論の著者としても有名である。『錯乱のニューヨーク』や『S, M, L, XL』などご存知の方も多いかもしれない。これまで都市をテーマに理論を発信してきた彼が今回、OMAチームと共にテーマにしたのは、その反対の大都市以外の地域である。 彼はこのエキシビションの目的について「都市について語った本は山ほどあるのに対し、countrysideに関するストーリーはほとんど伝えられていない。この気づきがプロジェクトのきっかけとなった」と語っている。

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Photo by Laurian Ghinitoiu

展示は6つのエリアに分かれており、イントロダクション、「レジャーと逃避(Leisure and Escapism)」、「政治の再デザイン(Political Redesign)」、「人口 (Population)」、「自然/保存(Nature/ Preservation)」、「デカルト主義(Cartesianism)」というテーマが設けられていた。

Level 4の「人口 (Population)」エリアでは、世界で新たに導入されている試み、または導入されようとしているプロジェクトを様々な3Dオブジェクトを用いて紹介し、それぞれ各作品の概要とインパクトが書かかれたミニパネルが添えられていた。展示物の一つには、中国で現在実用化されているオンラインプラットフォームの紹介もあり、実際のスマートフォンと農産物を並べることで、直感的に内容を理解できる工夫が施されていた。

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Photo by Laurian Ghinitoiu

Level 5に広がるのは、「自然/保存(Nature/ Preservation)」エリア。先ほどの「人口 (Population)」エリアで紹介されていた人々の変化を政治的や自然環境の変化といった、別の視点から研究し、特徴的な変化についてパネル展示によって紹介していた。写真によるリアルな様子を伝えるだけではなく、テクストとインフォグラフィックスを用いることで複雑な内容を分かりやすく伝えていたことも印象的であった。

Level 6の「デカルト主義(Cartesianism)」エリアでは、都市合理主義により「人」が必要とするような自然環境が必要でなくなり、countrysideの景観が変化していることを紹介し、この考え方を正しいとして進む社会に警鐘を鳴らしている。

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Photo by Laurian Ghinitoiu

上の写真は、人が手入れをしなくても機械が全て植物の成長過程を管理し植物の栽培を可能にしているマシーン。また印象深かった展示として、日本で開発・実用化が進められている産業用ロボットがあった。その展示方法も特徴的であり、産業用ロボットの横に今や通常の家電量販店では売られていないブラン管のテレビが置かれ、そのスクリーンを使って日本の少子高齢化や農村地域の過疎化の現状、そして人材不足を補うために日本はロボットの開発を積極的に進めていることを紹介していた。最新テクノロジーを駆使したロボットをブラウン管のテレビを使って紹介することで、人々が日々、躊躇なく受け入れている時代の変化をこのまま押しすすめて良いのだろうか、というOMAのメッセージを伝えているのではないかと感じた。

グッケンハイム美術館の特徴的な螺旋の展示エリアを登りきり、Level6から下を眺めるとエントランスフロアの床に見えるのは、人々(欧米が主)が「countryside」という言葉で思い浮かべる生き物や建物の切り抜きがある。古代ローマの掃除されていない床をイメージし、色合いを調整したというその絵は、どこか消えゆく過去をも連想させる。

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Photo by Laurian Ghinitoiu

ミュージアム全体を見渡して見える螺旋状の円柱には、ステレオタイプ的なcountrysideの風景が写った広告・ファッションブランドのキャンペーン、おもちゃなどのアーカイブ画像が装飾されている。

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countrysideにおける経済、政治、生活の変化から始まり、都市合理主義にならいcountrysideが変化していっている事実を伝える本展。自分なりの答えを見出すべく、会場へ訪れてみてはいかがだろうか。

Countryside Map

Countryside Map

"Countryside, The Future" INFO

展示会名 Countryside, The Future
会期February 20 through August 14, 2020
*現在、新型コロナウィルスのため閉館中
会場 Solomon R.Guggenheim Museum,1071 Fifth Avenu, New York
URLhttps://www.guggenheim.org/