メキシコの豊かな自然を読み解く

緑豊かなメキシコ・ナヤリット州の沿岸部に位置する「Casa Chacala」は、"自然に従うこと"を基本理念として設計された住宅である。初回の敷地視察から、建築事務所Estudio AMAはこの土地において既存の植生を最大限に保存し、樹木そのものが建築の方向性と配置を導くべきだと判断した。

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© Visualization by Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

敷地内には大小様々な樹木が群生しており、中には保護対象の種も含まれていた。それらは自然と「介入可能なエリア」を示し、建築の可能性を縁取っていた。この条件から、二つの参照軸が浮かび上がる。ひとつは植生が描く斜めの軸線、もうひとつは傾斜地形による下降方向への誘導である。このふたつの軸の交差によって、建築形態が導き出された。

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© Visualization by Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

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©Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

構成は三つの主要ボリュームから成る。内部共用空間を持つ「開かれたソーシャル・ボリューム」、ランドスケープとの直接的な対話を可能にする「透過的なソーシャル・ボリューム」、そして寝室を収めた「閉じられた堅固なボリューム」である。これらは三角形の中庭によって接続される。中庭は移動と静止の体験を豊かにする空間として、時に親密に、時に社交的に機能する。

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©Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

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© Visualization by Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

全体の動線は敷地を縦断する軸によって構成され、入口から寝室への遷移を導くと同時に、パブリックとプライベートの境界を明確にする。この住宅は、広大な眺望を求めるのではなく、内部に視線を向ける。地形や樹木の間に広がる「空白(void)」に注目し、即時的な環境との対話を中心に据えている。これにより、空間に内省的な質が生まれている。

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©Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

建築は直交的な幾何学から離れ、中央の一点に向かって収束する斜線を用いて、動きと緊張感を生み出す。素材の使い分けも空間構成を明確にする要素である。中立的な色調の堅牢な基礎が大地に建築をしっかりと根付かせ、温かみのある軽量な屋根構造が全体を包み込んでいる。Casa Chacalaは、環境を制限せず、それを受け入れる建築である。素材・気候・植生という自然の要素が交差する場として、調和と着地感を伴った空間が生み出されている。

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©Formatelier, Courtesy of Estudio AMA

Estudio AMA

Estudio AMAは建築・インテリア・グラフィック・アートまで幅広く手がけるクリエイティブ・スタジオである。すべてのプロジェクトは「語るべき物語」から始まり、語りを軸にした一貫したプロセスを重視している。価値観を共有するチーム同士の創造的なコラボレーションによって、アイデアは進化する。現在と未来のニーズを包括的に捉える視座を持ち、デザインと創造のプロセスにおいて常に誠実であることを目指している。