歴史的消防署を次世代のための劇場へ再生

ユネスコ世界遺産に登録されているオールドケベック歴史地区に位置する「La Caserne – The Theatre for Young Audiences」は、歴史的な消防署を子どもと若者のための現代的な文化施設へと再生したプロジェクトである。設計を手がけたSBTA inc.とDelort et Brochu architectesは、保存、コンバージョン、そして現代的な増築を組み合わせながら、この場所を新たな都市的ランドマークへと生まれ変わらせた。

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

建物は1912年にG. E. Tanguayによって消防署として建設され、その後1996年に増築されて、演出家ロベール・ルパージュ率いる実験的シアターラボ「Ex Machina」の拠点となった。2021年にEx Machinaが移転した後、この施設は青少年向け劇団「Les Gros Becs」に引き継がれ、350席の劇場と多目的ホールを備えた新たな文化施設として再編された。

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

設計チームは、このプロジェクトを単なる改修としてではなく、異なる時代や用途、そして利用者同士をつなぐ“対話”として捉えた。保存された消防署、黒御影石で覆われたEx Machina時代の増築部分、そして新たな増築棟は、オールドケベック特有の石造建築群に呼応しながら共存している。抑制された幾何学的ボリュームは、既存消防署、特に象徴的な塔を際立たせ、都市景観におけるランドマークとしての存在感を強調している。

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Photo credit: Vladimir Topouzanov

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

街路レベルでは、建築は周辺環境との新たなつながりを生み出している。Dalhousie通りとBarricade通りの角に設けられた小さな広場は、近隣の博物館や河川公園、セントローレンス川へと開かれた公共空間として機能し、地域に新たな交流の場を提供している。また、保存された建物群を貫くように設けられた中央ホワイエは、Dalhousie通り側のメインエントランスと、Bell通り側のスクールバス利用者向け入口を結びつけている。

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

内部では、動線そのものが空間体験として計画されている。開放的な階段が、劇場、読書室、多目的スペースへと来場者を導きながら、上部のガラス越しに歴史的な塔の姿を徐々に浮かび上がらせる。インテリアは、遊び心と歴史的素材の継承を両立させており、鏡面ステンレスや銅色の金属仕上げ、木質仕上げによって、既存建築の質感や色彩を現代的に再解釈している。

 

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

プロジェクトの中心となる劇場空間では、4種類の木材トーンを用いて外観モチーフを室内へ展開し、若い観客のための没入感ある空間を生み出している。建築全体を通じて、子どもたちの好奇心や身体的な動きを促しながら、場所の歴史的記憶とのつながりを維持することが目指された。

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

また、本計画ではサステナビリティと「サーキュラリティ(循環性)」も重要なテーマとなっている。既存のコンクリートや鉄骨構造は保存・再利用され、旧Ex Machina棟の黒御影石外装も新たな建築へ再活用された。さらに、新設された全面ガラスの外皮には熱橋を抑える構法が採用され、高いエネルギー性能と耐久性を実現している。

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

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Photo credit: James Brittain

歴史的消防署を、子どもと若者のための活気ある文化施設へと転換した「La Caserne」は、コンバージョン建築が都市の記憶を継承しながら、持続可能性と公共性の両立を実現できることを示すプロジェクトとなっている。

Saia Barbarese Topouzanov Architects(SBTA inc.)

Saia Barbarese Topouzanov Architects(SBTA inc.)は、1968年にマリオ・サイアによって設立された建築・都市デザイン事務所である。1987年にディノ・バルバレーゼ、2002年にウラジーミル・トポウザノフがパートナーとして加わった。

複雑なプロジェクトにおいても明快なコンセプトによって空間を構築する姿勢、人々の交流を促す空間性、光の扱い、そして現代的な建築言語が、同事務所の設計を特徴づけている。都市開発、集合住宅、大学、スポーツセンター、劇場などの公共・文化施設に至るまで、幅広い分野で豊富な実績を持つ。