大阪箕面森町に日本の建築家 北村泰之による自然のグラデーションが息づく家

大阪府箕面市の最北端に位置し、自然環境に恵まれた計画地には、市内中心部に建てられた家と大差のない家々が建設されていた。しかし日常生活の中で自然の豊かさを吸収できる、都会に建てられた家とは異なるシンプルな家が求められていた。敷地の南側は道路に面しており、東側と西側には住宅地が隣接。北側は、地すべり災害警報区域の緩衝地帯として設置された里山農園の管理道路に面している。背景には箕面市最北端の青貝山の壮大な緑が特徴だ。この「都市」と「自然」の境界に立ち向かうには、周囲の自然環境と調和した、内と外の境界が曖昧な静かな住居が必要だった。

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Living room with two pillars and a large top light
Photo credit: Masashige Akeda

家は平屋建てで、シンプルな切妻屋根が周囲の風景とゆるく連続している。また建設予算が限られていたため、構造は従来の木造工法を使用して建設され、すべての柱は105 mm四方、通常の構造用金属を使用して建設された。柱が1ピッチ離れたシンプルな対称フレーム構造、そして内側と外側に1本のクライミングビーム、端が狭くなった垂木を使用して、高い耐震性能を確保し、建設期間を大幅に短縮した。

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The suburban boundary between ‘city’ and ‘nature’
Photo credit: Masashige Akeda

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Sunlight diffuses into the living room during the daytime
Photo credit: Masashige Akeda

内部空間は、ペアの開口部、明るい屋根、深い庇、そして木々と青い空を引き込む大きな天窓によって拡張されている。そして、部屋を入れ子にすることで、建物の内部と外部をぼかす中間領域が作成された。広い空間の中央に配置された2本の柱は、断面が小さい建築部品として配置され、森の中に立っている木のように落ち着いた空間を提供している。

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Pendant lights created by aluminum spinning gently illuminate a room in the evening
Photo credit: Masashige Akeda

実直な材料の使用と、不透明度と透明度のバランスに基づいた単一の建築ジェスチャーが建物のスタイルを確立した。細い木製の梁で仕切られた平屋の家の中には、キッチン、バス、その他の機能が、白塗りまたは合板で覆われた多数の入れ子になった直線的なボリュームに含まれている。モダンで頑丈な構造は、クラシックで風通しの良いエンベロープとは対照的だ。一見軽い空気感がありながら、伝統的な木造工法のおかげで耐震性には優れている。驚くべき環境での新表現となったこのプロジェクトは、控えめな手段で偉大さを達成できることを示している。

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Open-plan guest room with views to the outside
Photo credit: Masashige Akeda

「私たちは環境建築の未来を模索してきました。私たちの目標は、地元の人格と周囲の自然環境との忘れられた関係を再構築することでした。その結果、高い住宅性能に加えて、より多くのことを感じる新しいタイプの建物が生まれました。風景というよりは自然の一部のようだ」 建築家 北村泰之

近年、住宅性能への需要は着実に高まっている。バランスの取れた形状と大きな開口部を備えたこの建物は、地震で有名な日本で耐えるよう耐震グレード3の基準に合わせて設計された。また優れた断熱性能基準も備え、落ち着いたリラックスムードになっている。

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Deep eaves and light roof at night
Photo credit: Masashige Akeda

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North elevation with wooden frame and roof windows
Photo credit: Masashige Akeda

この箕面森町の家は名誉あるAZアワードを受賞し、2021年のアーキタイザーA+賞の建築+リビングスモール/ローコストデザインのファイナリストに選ばれた。

建築家 北村泰之について

北村泰之が率いるYKAデザインチームは、日本の建築文化、建物、都市部を受け入れながら、持続可能な建築デザインの状態を前進させる革新的なプロジェクトを作成している。