ポーランド・Żoryから都市居住の新モデルを提案

ポーランド南部プレファブ住宅が並ぶ住宅街の一角に、ひときわ異彩を放つ集合住宅「Żorro」が完成した。本プロジェクトは、建築家マチェイ・フランタ率いるFranta Group(フランタ・グループ)によって設計されたもので、「建築の基本原理」である。与えられた場と文脈のなかで、機能・美観・空間性の水準を向上させるという理念に基づいている。adf-web-magazine-zorro-12

「Żorro」は1970年代に多く見られた典型的なプレファブ建築のキュビチュア(立体量)を変形し、あたかも「スーパーヒーロー」のようなユニークな外観と質の高い空間性をまとわせることで、周辺環境との明確な差異を生み出している。この建築は地区全体の再構築の指針となる新たなモデルとして機能している。adf-web-magazine-zorro-11adf-web-magazine-zorro-1adf-web-magazine-zorro-3adf-web-magazine-zorro-6

機能と美学の融合 ― 「夏のリビング」「夏の庭」

本プロジェクトの核心は住民の生活の質を向上させることである。そのために選ばれたのは、通常のバルコニーではなく、自然光・空気・緑といった外的環境に開かれた、機能的な屋外空間を各住戸に設ける手法だった。内装仕上げの費用をあえて削減し、その分をテラス空間に投資することで、各住戸には「夏のリビング」および「夏の庭」と呼ばれる、部屋一室分または複数室分に匹敵する広さの屋外空間が設けられた。その結果、実質的な居住面積は各住戸の内部面積に対し30〜50%増加している。adf-web-magazine-zorro-9adf-web-magazine-zorro-8

adf-web-magazine-zorro-7adf-web-magazine-zorro-5黒い外壁がもたらす四季の反応性

テラスの奥行とそれに対応する屋根、そして黒色の外壁は、時間帯や季節に応じた熱反応を意図的に設計している。夏季には朝夕のみ太陽光が当たり、日中は影を作ることで温度上昇を抑制。一方、冬季には低い太陽が日中もファサードを照らし、蓄熱・放熱によってテラス空間を快適に保つ。adf-web-magazine-zorro-4adf-web-magazine-zorro-2

adf-web-magazine-zorro-10質の高い集合住宅は地方都市にも実現可能

注目すべきは、販売価格が1㎡あたり6800〜7500ポーランドズウォティ(約1600〜1760ユーロ)と、低コスト集合住宅として提供されている点である。設計者は、「良質な居住空間を提供する建築は大都市圏に限定されるべきではない」との信念のもと、このプロジェクトを公共資金に頼らず実現させた。都市再生に対する新たな指針を提示する「Żorro」は今後の住宅開発のひとつのベンチマークとなる可能性を秘めている。adf-web-magazine-zorro-17adf-web-magazine-zorro-16adf-web-magazine-zorro-15adf-web-magazine-zorro-14adf-web-magazine-zorro-13

マチェイ・フランタ

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2010年よりフランタ・グループ・スタジオを主宰。Tarnowskie Góryの長屋をオペラホテルに改築、Oswaldów Parkの住宅地、Chorzówの市立病院拡張、クラクフとスウォコヴィツェの幼稚園などのプロジェクトを手がける。ミシアドロの教育・スポーツセンター、スウォコヴィツェの幼稚園、シクフの森林樹木園、ザブルツェの集合住宅など、国内外のコンペティションで受賞。