景観に溶け込み、生活インフラを供給する建築
ヴオサーリ・バイオエネルギー加熱プラントは、ヘルシンキ東部にあるヴオサーリ発電所の敷地内に立地している。地元の電力会社ヘレン社が所有するこの施設は、1980年代からヘルシンキの電力と地域暖房の大部分を生産してきた。本プラントは、2030年までにカーボンニュートラルを目指すヘレン社の取り組みの一環として建設された。

The boiler and heat recovery system building double facade seen from inside
Photo credit: Max Plunger
260MWのバイオエネルギー加熱プラントはヘルシンキの地域熱の約4分の1を生産し、市の二酸化炭素排出量を年間約70万トン削減できる。122%という高エネルギー効率を誇る燃焼プラントで、発電はしないものの熱電併給への転換は技術的に可能である。

South view of the fuel receiving building (left) and the electricity spaces building (right)
Photo credit: Max Plunger
本プラントはキヴィネン・ルサネン・アーキテクツがヘレン社からの依頼を受け設計した最新のもので、10年以上の技術と規模の観点から発電所群の開発に関する様々なオプションが検討された期間を経て生まれた。ヴオサーリでの電力と地域熱の生産は1980年代に始まり、継続的に開発・拡張されている。当初からキヴィネン・ルサネン・アーキテクツは発電所敷地内のすべての建物の設計を手がけてきた。

Bioenergy Heating Plant seen from Vuosaarenhuippu Park to the north of the site.
Photo credit: Max Plunger
発電所には背の高い長いボイラー棟とバイオ燃料処理システムビルの2つの主要部分がある。ボイラー棟には、ボイラーと高度な熱回収システムが設置されている。燃料処理システムビルは、バイオマス燃料の受け入れ、選別、保管のための建物と、コンベア・システムで構成されている。
現場のレイアウトは、ロジスティクス、プロセスフロー、安全性を優先して設計。将来的なプロジェクトやロジスティクスの自由度を確保するため、敷地内の建物や設備の配置やサイズをコンパクトにすることが求められた。このことは新しい施設が既存の工場にいかに近いことや、燃料処理システムビルが、様々なパーツを狭い陣形に配置することを可能にする技術を採用していることからもわかる。また、メインとなる長いコンベアの脚は、コンパクトな正方形断面のスチール製トラスで、設置面積を最小限に抑えられた。
本プロジェクトはヴオサーリ港の景観の中で非常に目立つ部分であるため、発電所敷地の北側にある新しい公園、さらに西側にある住宅地、そして海からの眺めを考慮して設計された。その一方で、サタマカーリ通りや既存の発電所施設からの近接した眺望は必須であった。完成したプロジェクトが周囲からの視認性のある、質の高いデザイン、施工、仕上げを確保することが建築的な目標といえた。

The boiler and heat recovery system building West facade and the main conveyor bridge
Photo credit: Max Plunger
新しい建物の規模は、敷地の周辺から中心に向かって大きくなっている。背の高いボイラービルは敷地の中央に、低い燃料処理ビルは西側にあり、通行する交通や人々に近い。こうすることで、敷地の工業的な特徴がいくぶん和らぎサタマカーリ通り沿いの高く急な堤防に施された大規模な植物エリアと街路の景観に溶け込ませている。

The boiler and heat recovery system building double facade seen from outside
Photo credit: Max Plunger
ヴオサーリ・バイオエネルギー加熱プラントは、持続可能な地域熱を都市に提供することで、生命に関わる基本的なニーズのひとつを満たしている。本プロジェクトはその価値と重要性を伝えるものである。
- The South facade of the fuel receiving building Photo credit: Max Plunger
- Fuel handling area facade details Photo credit: Max Plunger
キヴィネン・ルサネン・アーキテクツ
クライアントのプロジェクトの価値と社会にとっての重要性を反映した建築を創造していくことを目指している。手がけるプロジェクトがいかに繁栄と幸福につながり、持続可能性を強化し、技術を進歩させ、文化の発展に貢献することを願っている。