Tinker imagineersのデザインによる世界遺産「スティーヴンス・クリント」の展示

スティーヴンス・クリントは、デンマーク南東の海岸に沿ってそびえるチョークの断崖で、世界屈指の化石記録の宝庫である。恐竜時代を終わらせたと言われる約6600万年前の隕石衝突の痕跡を見ることができる世界遺産としても知られている。クリエイティブエージェンシーTiner imagineersは、ボースダル採石場の跡地にできた「スティーヴンス・クリント博物館」にて、隕石衝突の痕跡の科学的発見や、恐竜絶滅の歴史、そしてそれが地球にもたらしたものについて解説する展示をデザインした。

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Photo credit: Mike Bink

17kmに及ぶスティーヴンス・クリントが2014年にユネスコ世界遺産に登録されてから、博物館には世界中から観光客が訪れている。2022年10月12日、デンマーク女王のマルグレーテ2世によって正式に発足し、一般に公開された新しいビジターセンターが加わることによって、更に魅力的な観光地となるだろう。

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Photo credit: Mike Bink

スティーヴンス・クリント・ホール

展示は大きく2つのセクションに分かれている。スティーヴンス・クリント・ホールでは、劇的な絶滅と生き残りをかけた地球の壮絶なサバイバルを没入体験できる映像を見ることができる。大きな崖の破片に部分的に映し出される映像により、隕石が残した痕跡を辿ることができる。「スティーヴンス・クリントのチームの協力により、本物の崖の破片を持ち込むことができました。そして、約6600万年前の絶滅の真実を語るにふさわしい中央の舞台にこの崖を設置しました。」と、Tinkerのディレクター、スタン・ボショウワーズは言う。

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Photo credit: Mike Bink

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Photo credit: Mike Bink

ワールド・ヘリテッジ・ホール

もうひとつの展示セクション、ワールド・ヘリテッジ・ホールでは、物語が時系列に語られる。部屋は、時代ごとに更に3つのゾーンに分けられており、約6600万年前の地球、恐竜が繁栄し我々の祖先である哺乳類と共存していたころ、そして隕石が地球に衝突したときまで、来場者を異なる時空へと誘う。3つ目のゾーンでは、地球における生命がどのように復活し、進化を遂げたのかが説明される。

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Photo credit: Mike Bink

時系列の展示に並行して、科学的な側面に焦点を当てた解説もなされている。そこには、アメリカの著名な地質学者、ウォルター・アルバレスがスティーヴンス・クリントで採取したサンプルより発見した事柄などが含まれている。同様の発見がされている他の場所についての展示もあり、同じような地球規模の絶滅が起こる可能性について議論している。展示や什器のデザインは、隕石衝突のあとに残った残骸をイメージしている。重たいイメージの展示を取り囲むのは、生命感のある活き活きとしたイラストレーションを施した壁紙で、コントラストのある空間に柔らかさと詩的なエッセンスを加えている。Tinkerのボショウワーズは、「好奇心に満ち、研究も踏まえた両方のレンズを通して、この重要な世界遺産に向き合い、筋の通った展示を創り上げることができました。」と誇らしげに語る。

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Photo credit: Mike Bink

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Photo credit: Mike Bink

スティーヴン・クリント博物館のディレクター、スティーン・ボンケ・ソーレンセンは「本館では、全ての感覚に訴える展示を行うことで、来場者にまたとない体験を提供します。スティーヴンスの新たなランドマークとなる本館で展開される双方向の展示で、来場者が年齢を問わず、歴史を特別な体験を通して学んでいただけたらと思います。展示だけでなく、カフェやショップで取り扱うローカルの商品などを通して、世界中の人々と交流できることを楽しみにしています。」と述べている。

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Photo credit: Mike Bink

スティーヴンス・クリントについて

デンマーク南東の海岸に連なる17kmの断崖。2014年にユネスコ世界遺産に登録される。世界中に灰を降らせるとともに地球上の生物の50%以上を絶滅させ恐竜時代を終わらせたといわれている、約6600万年前の白亜紀末、中央アメリカのユカタン半島に衝突した隕石の影響を示す世界で最も顕著な見本であると評価されている。1978年に閉鎖されたボースダル採石場跡地、スティーヴンスの崖の近くに「スティーヴンス・クリント博物館」は建てられた。博物館新設の目的は、世界遺産としてのスティーヴンス・クリントの今後の発展と更なる研究のためであり、この地の自然と歴史、文化を紹介することで、スティーヴンス・クリントの他の施設へ人々を導くゲートウェイとして機能することでもある。

Tinker imagineersについて

Tinker imagineersは、展示やマルチメディア劇場に没入型体験のアイデアを提供するクリエイティブエージェンシー。1991年にオランダのユトレヒトに設立され、デンマーク、オーストリア、スイスなどのヨーロッパ諸国を中心に、グローバルに事業を展開している。事業内容は、研究、プロジェクト開発、デザイン、AV、マルチメディアプロジェクトなど多岐にわたる。創設者のエリック・ベーアとスタン・フォレスターは、2018年に没入体験デザインに関するそれぞれの思想をまとめた本を共著している。2人は没入体験デザインを、ストーリーを語る空間を創るアートであると捉えている。著書『Worlds of Wonder - experience design for curious people』は、この刺激的なコミュニケーションの「What」「Why」「How」を説明する一冊となっている。