通年エアコン不要で快適な家
3,311平方メートルの敷地の南側、9本の既存の樹木の間を流れるようなボリュームが横切っている。そのうちの2本の樹木がオープンデッキエリアを区切り、他の樹木は住宅「ナインxナイン」のそばに佇む。インドのガンディナガルにある、サンジャイ・プリ・アーキテクツによるこの住宅は北西の角にある大きな木々のあいだ、門から中に入るとゆっくりと見えてくる。
南側に建築空間を配置することでできた北側の大きな庭を活かし、全ての部屋が庭に面している。一年の大半で気温が35℃を超え、南半球の太陽が降り注ぐこの場所の暑い気候に対応して計画されたものである。
住居は平面と断面が同時にT字型になっている。北側から入ると、中央の背骨が東と西に向かって枝分かれしており、中心にはらせん階段がある。断面的には、地上階から入り、上階と下階に分かれている。
西側にはゆったりとした中庭があり、自然光と風を地下に取り込み、滝のある起伏のある壁に沿って開かれた階段で地上の庭とつながっている。この西側の滝と北東側の浅い反射プールは、空間にパッシブな涼しさを提供している。敷地内にある既存の樹木のうち6本が中庭に、さらに3本が南東側に残されている。
玄関階には、リビング、ダイニング、キッチン、ゲスト用寝室などの共有スペースがある。上層階には家族用の寝室が3つあり、それぞれの寝室は木々や庭に向かって2面開口している。地下1階には娯楽スペースと、オーナーのアートコレクションを展示する小さなギャラリーになる。
家中のどのスペースも大きな片持ちのデッキに面しており、部分的に庇があり、部分的にオープンになっている。これらの深い凹みは、気温が50℃まで上昇する暑い夏の間、内部の容積を涼しく保つ役割を果たしている。内部は、白い大理石のフローリング、木製の家具、控えめなアクセントなど、ミニマルなインテリアでまとめられている。
本住宅はエネルギー効率に優れた設計となっており、年間を通してエアコンを使わず過ごすことができる。各所に十分な自然光が入り、水のリサイクル、雨水の利用、内装に自然素材を使用している。既存の木々や建物をすべて残しながら、敷地に合わせて設計されており、建物の方角を熟慮し熱取得を抑えることで気候に対応、自然と融合した空間を作り出している。
- Photo credit: MR.VINAY PANJWANI
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- Photo credit: MS.ISHITA SITWALA
- Photo credit: MR.VINAY PANJWANI
サンジャイ・プリ・アーキテクツ
サンジャイ・プリとニーナ・プリによって設立。オーストラリア、スペイン、モンテネグロ、アラブ首長国連邦、オマーン、米国ダラスで建築プロジェクトを受注。現在、インドの51都市でプロジェクトを設計している。350の国際デザイン賞を含む475以上の賞を受賞。
受賞歴には、アーキタイザーA+アワード・ニューヨーク2024の年間最優秀サステナブルデザイン事務所賞、WA UKインターナショナル・アーキテクト・オブ・ザ・イヤー2024、ワールド・アーキテクチャー・フェスティバル・シンガポール2023の最優秀完成建築物賞(プロダクション・エネルギー&ロジスティクス)、クリエイターズ・デザイン・アワード・パリ2023の最優秀住宅プロジェクト賞、LOOPデザイン・アワードの最優秀大規模建築事務所賞、ワールド・アーキテクチャー・フェスティバル・リスボン2022の最優秀住宅プロジェクト賞、リーフ・アワード・ロンドンの最優秀インテリア・プロジェクト賞2021などがある。
現在108名のスタッフを擁し、その設計哲学の真髄は、文脈に即した持続可能な設計ソリューションを進化させること、そして新しい設計の方向性とともに空間認識を探求する空間を創造することにある。