モントリオールのアート・文化発信地に新たなランドマークとなる複合ビル「Humaniti」が建築
モントリオールのダウンタウン、歴史的建築物が多く残るオールド・モントリオールに隣接するアートと文化の発信地、カルティエ・デ・スペクタクル地区に、新たなランドマーク「Humaniti」が誕生した。ラグジュアリーホテル、マンション、賃貸物件、レストラン、オフィスビル、ブティック、公共スペースなどが入る39階建の建物は、モントリオールで最も高い複合施設で、アルファベット文字の「H」を模った外観が特徴である。ケベックを代表する世界的芸術家、ジャン=ポール・リオペルに敬意を表して名付けられた広場「プラース・ジャン=ポール・リオペル」を眼下に見下ろし、モントリオールのスカイラインに新たな輪郭を描く存在感を放っている。カナダを代表するデザイン事務所のLemayの指揮のもと建築デザインが設計され、姉妹ブランドのLemay+Escbarがホテルのインテリアを手掛けた。
大胆さとスマートさが絶妙なバランスで同居するデザインは、ロケーションの贅沢さを吸収しつつ、独自のアイデンティティを形作っている。開放的でありながら独自の空間も構築することで、都市の高密度地帯においてもコミュニティ意識が持てるような場となっている。Humanitiは都市における限られた様々な状況のなかで、平面的かつ立体的な街並みの再構築を行った。
そびえたつアイコニックな2本の塔
ジャン=ポール・リオペル広場の目の前には、2本の細長い塔がそびえたつ。先端を切り取ったような形をしている高い方の塔は、ニューヨークのフラットアイアンビルをオマージュしている。低い方の塔は、一枚岩が崩れ落ちたようにも見える。中央の噴水から放出されるミストが、建物に囲まれた空間でエコーし、息をのむような情景の美しさを増幅させている。
巣箱に見立てた住居
そびえたつ塔を更に強調させる独特の建築デザイン「Hive」。巣箱(hive)を連想させる組み立て式のバルコニーは、道路からは全貌を拝むことはできないが、マンションが150戸、賃貸住居が314戸の大規模な住居棟となっている。それぞれの巣箱は、ひとつにだいたい4つの世帯を含んでおり、これはモントリオールの街なみで馴染みのある住居スタイルである。違い棚のように積み上げられた巣箱は、シンプルでリズミカルなデザインを提供しながらも、日よけの機能も備えている。人間の尺度に合わせてグループ化されたデザインは、多くの世帯を賄いながらも建物全体のスケールの大きさを感じさせない。
Humanitiはモントリオールだけでなくカナダにおける複合施設の新しい在り方を提案しています。これは、あらゆる方法で現状打破を試みた開発チームの挑戦と勇気によるものです。思慮に富んだニュアンスのあるデザイン戦略が、大規模な建築開発において重要であることが証明された例となりました。Humanitiは、デザイン都市としてのモントリオールの復活と発展を担うシンボルなのです。
アンドリュー・キング、チーフ・デザイン・オフィサー、Lemay
ホテル
4.5つ星のホテルのマリオット オートグラフコレクションは、片持ち梁の形をした建物の11階にわたり、193の客室が用意されている。ちょうど住居空間と商業空間を繋ぐ、「H」の形を完成する部分である。
ホテル内は、Humanitiのシャープなデザインをイメージした幾何学的なアクセントと、「人間性(humanity)」をイメージした穏やかで柔らかなタッチが共存している。それが最もよく表現されているのが、ホテルのロビーである。しなやかに湾曲したシャンデリアはDNA構造のように見える。その美しさは、幾何学的な模様の床、高い天井と目を見張るようなパターン、そして金の線形のパーテーションで構築される空間と呼応し、更にその輝きを増す。彫刻の展示も同様に、幾何学性と人間性のコントラストを助長している。
同じようなアプローチは、ゲストルームにも見られる。喜びとおおらかさを表すリッチなイエローと、静穏と平和を表す深いティール(青緑)が同居し、贅沢なバランスを実現している。また、カーペットや浴室のタイルに幾何学模様を採り入れることで、Humanitiの大胆でシャープなイメージを内在させ、母なる自然や人間をイメージしたアートワークとのコントラストを生んでいる。
モントリオールのアイコニックなコンベンションセンター、パレ・デ・コングレドのすぐ近く、歴史的地域の入口に位置する、カルティエ・インターナショナルに当プロジェクトはあります。街の活気あふれる中心部において、楽しく喜びに溢れた現代的な空間を作りたいと考えました。洗練されたラインで空間を設計し、そこに電光アートや家具を設置しました。
アンドレ・エスカバー、デザイン責任者、Lemay+Escobar
自然と繋がる居住空間
Humanitiでは、自然に近いところで健康的な生活を送りながら大都市の魅力を満喫できる。平穏をもたらす自然光の中で生活できる空間を提供し、緑に囲まれた景観を楽しむことで、都市に暮らす人々が自然に回帰することができる。これが、ダイナミックな大都会において可能となるのだ。プロジェクトの自然との繋がりをより強固にするため、自然界で見られる色を採用するカラースキームもとられている。
Lemayについて
1957年にケベック州で創業した建築デザイン事務所のLemayは、450人以上の建築家、デザイナー、起業家などと組み、人々の関わり合いを生む空間づくりを目指すことで、世の中の変革を推し進めてきた。健康・環境・脱炭素の3つにフォーカスした独自のアプローチ「Net PositiveTM」は、より良い未来に向けたサステイナブルな結果を導くことができる、当社の強みのひとつである。
Lemay + Escobarについて
インテリアデザインから建築、ランドスケープデザイン、アートキュレーションまで、Lemay + Escobarは人々の心に響く、刺激的な体験を創出している。多くの作品を世に送り出しているアンドレ・エスカバーの才能と、アメリカ市場で手掛けてきた数々のプロジェクトの経験をもとに、サステナブルな暮らしに向けたユニークなプロジェクトを世界中で展開している。モントリオールを代表する世界的建築事務所のLemayとは、長年にわたり、共に多くのプロジェクトを手掛け、世界的な評価も高い。