新たな幾何要素を取り入れた放射状のオフィス空間

デザイン事務所asapがこのたび手掛けたのは、世界有数のベンチャーキャピタル「Zhen Fund」の北京オフィスである。このプロジェクトでは、都会の景色を望む立地のアドバンテージを活かし、情熱と喜びに象徴されるクライアント企業の事業のダイナミズムを表現した空間づくりを目指した。カーブしたガラスの壁で囲われた個室を放射状に配置した空間は、独立した空間を尊重しながらも統一感があり、まるで雲の中を歩いているかのような、心地よい気分にさせてくれる。

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

一見、通常のオフィスデザインと変わらない内容に見えたオファーだったが、与えられたスペースに対する会議室の数が多く、またそのサイズも様々で、特に100人を収容するXLサイズの会議室も含まれていることが最大の難関であった。そのため、スペースを贅沢に使い、空間で遊ぶようなデザインの余地はなかった。また、カーブした箇所も存在することから、ありがちな長い直線の廊下は採用できないことが分かっていた。さらに、Zhen Fundがテクノロジー関係のスタートアップだけでなく、先見性のあるコンシューマープロダクトにも投資をしていることから、未来への希望や野心を映し出すような空間であることも求められた。

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

今まで手掛けてきたプロジェクトであらゆるタイプのカーブを模索してきたasapは、その経験をどのようにこのプロジェクトに活かせるかを考えた。一見、非効率に見えるカーブしたガラスの会議室は、以下のアドバンテージをもたらし、このプロジェクトの代名詞となったのである。

  • オフィスにありがちな中廊下を避けることで、単調にならず、バラエティーに富んだ空間となっている。
  • ガラスの曲面が生む、形としての奇抜さだけでなく、反射する影や光の屈折など、多様な視覚的要素を空間にもたらしている。
  • 曲面によって部屋と部屋の間に生まれたスペースは、立ち話などができるちょっとしたプライベート空間となる。直線の廊下では得られなかった恩恵である。

業界の競合他社がコーヒーショップのようなオフィスで働く中、全く新しい概念でデザインされたZhen Fundのオフィスは、企業よりもオフィスを見に来る人が多いほど話題となっている。

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

asapは、どのプロジェクトにおいても常に幾何学的な冒険を試みている。ここ10年は、球体、円形、楕円、アーチ、ベジエ曲線など様々な曲線を用いてきた。今回のプロジェクトでは、新たな幾何学要素、「放射線」を採用した。これは空間の要求にもっとも効果的に応えるだけでなく、廊下に「テニスの球が跳ね返る」ような愉快な効果をもたらすことも発見した。一方で、このオフィス全体が、ビルを包むひとつの大きな円となり、オフィス内に散らばった各要素をまとめて統一感をもたらしている。

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

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Photo credit: Jonathan Leijonhufvud

asapについて

asapは、2011年に設立された総合デザインオフィスで、ロサンゼルスとニューヨークを拠点に事業を展開している。空間、マテリアル、明かり。時代に左右されない3要素を元に、デザインにアプローチする。人類が歩んできたデザインの歴史からその知恵を吸収し、常に最良のリソースを用いながら各プロジェクトに臨んでいる。