物事や出来事のかたちはデジタル社会においてどのように変化するのかについて考える展覧会

NTT東日本が運営する文化施設NTTインターコミュニケーション・センターでは「ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち」を2023年6月24日(土)から2024年1月14日(日)まで開催する。 「ICC アニュアル」は、2006年度から2021年度まで開催した「オープン・スペース」展を、その役割やコンセプトを継承しながら、2022年度より長期展示としてリニューアルした展覧会となる。

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Natura Machina(筧康明、ミカエル・マンション、クアンジュ・ウ) 
《Soundform No.2》2022年

展覧会概要

現在、仮想世界は拡張された現実世界として現実の一部となり、バーチャルなものもまた現実世界における実在とみなされるようになっている。メタバースやミラーワールドといった現実世界の拡張された場としての仮想世界が現実世界と連続した新しいリアリティを持ちはじめ、そこではリアル(現実)とバーチャル(仮想)という二項ではなく、フィジカル(物理空間)かデータ(情報空間)かの違いととらえられている。日常をとりまく見えないものごとの数々にかたちを与えることは、これまでもアートの領域で大きなテーマとなってきた。データの視覚化や解析の方法によって得られる結果が変わるように、さまざまな不可視の事象にかたちを与えるのかによって、さまざまな表現の可能性が広がっている。今年度のICCアニュアルでは、拡張された現実世界としての仮想世界が生活環境として浸透しつつある現在、物事や出来事のかたちはどのように変化するのか、記憶、ふるまいはどのように表されうるのかを、さまざまな異なるテーマの作品から考察する。

伊阪柊
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伊阪柊《Reconnaissance “Tephra”》2022年(参考図版)

《The Spumoni》は、3DCGの映像作品シリーズ「Sp-s」の最新作。このシリーズは、伊阪の住む親しみのある時空間と、どこか遠い時空間との関わりをめぐるフィールドワークをもとに映像が制作される。また、伊阪が作品制作と並行して進めているエッセイ・フィルムと呼ばれる映像作品形式に関するリサーチ(「Excitation of Narratives」。メンバー:玄宇民、竹内均、伊阪柊)も、本作の制作に活かされている。

evala(エヴァラ)
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evala+鈴木昭男《大きな耳をもったキツネ》2013年

《大きな耳をもったキツネ》は、ICC無響室のために制作された8.1ch立体音響によるサウンド・インスタレーション。鈴木昭男の自作楽器による演奏やevalaの故郷であり鈴木にも縁の深い京丹後でフィールド・レコーディングした音源をもとに、evalaが録音場所の空間の残響と反射を擬似的に作り出し、そこに音響的変化を伴う音の運動を再構成して作曲している。最初の発表から10周年を迎える今年、《大きな耳をもったキツネ》全4曲および《Our Muse》を再展示する。

Natura Machina(筧康明+ミカエル・マンション+クアンジュ・ウ)
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Natura Machina(筧康明、ミカエル・マンション、クアンジュ・ウ) 
《Soundform No.2》2022年

《Soundform》は熱により空気が振動し音が発生する熱音響現象を利用した、インスタレーション作品のシリーズ名。この作品で使われているレイケ管は、ガラス管の中に発熱体を設置した装置で発熱体に電気を通すとガラス管に温度差が生まれ、管内部に空気が引き込まれ自励振動することで音が発生する。ここでは、鑑賞者もまた、場に影響を与える存在となる。

菅野 歩美(かんの あゆみ)
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菅野歩美《未踏のツアー》2022年

《未踏のツアー》は、福島県西会津町を元に作られたCGの街をツアー形式で踏破する映像インスタレーション。菅野は、自身では訪れたことのない福島県西会津町に関係する物語を小説やウェブ上の広報誌、住民とのビデオ通話を通して収集。そしてこの地の3DCG模型を作成し、集めた資料に基づいて様々な物語を埋め込んだ。そこには、現実の土地と紐づけられながら同時に遊離した、あらたに土地の記憶や物語を紡ぐ場としての可能性が秘められている。

小光(こみつ)
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小光《Five Years Old Memories》2023年

《Five Years Old Memories》は、小光が知人から集めた5歳頃の記憶を元に制作された、オムニバス形式のインタラクティヴ・アニメーション作品。日々の食事や送り迎えのときに感じていたことや、幼なじみとしていた遊びなどのエピソードが手描きのアニメーションで表現され、インタヴュー時の音声とともに再生される。「ICCアニュアル 2023」では、ICCの展示室に合わせたインスタレーションとして展開。会期中にエピソードの追加も予定。

津田 道子(つだ みちこ)
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津田道子《東京仕草》2021年
「Back TOKYO Forth」展示風景(東京国際クルーズターミナル、2021)
Photo: ARAI Akira (Nacása & Partners Inc.)

《東京仕草》は、映画『東京物語』(小津安二郎監督、1953)に代表される小津映画に登場する女性の仕草に着目し制作された映像インスタレーション作品。映画中の女性の動作を抽出して、撮影セットを概念化した空間やイラストレーション、動きの軌跡、映像などによって構成している。家事の主な担い手であり続けてきた女性の所作に着目することで、過去から現在、そして未来へと向かう文脈を鑑賞者に想像させる。

時里 充(ときさと みつる)
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時里充《ハンドメイドムーブメント season1 大体の事柄は布に覆われてしまっている》2022年

《ハンドメイドムーブメント》は、1話ごとに2体の不思議なパペットが対話する様子を描いた、3DCGアニメーションのシリーズ。各話の制作は、時里が自宅の周辺や訪れた場所を3Dスキャンするところから始まるが、その後の制作過程には時里以外にもAI(画像からの物体検出、また単語群からのセリフの生成)や人間の声優(声の演技)など、さまざまな「他者」が介在し、リレーのように創造行為が連鎖する。展覧会会期中に、オンライン・アーティスト・イン・レジデンス プログラムとして、シーズン2の制作を予定。

東京大学 舘(たち)知宏(ともひろ)研究室 × 野老(ところ)朝雄(あさお) × [ ]
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「Connecting Artifacts 01 つながるかたち展 01」展示風景(2021、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館)

単純なかたちが一定のルールでつながり、全体を構成するしくみは、人工物、自然現象を問わず現われる普遍的な原理である。美術家の野老朝雄はこの原理を「個と群」と呼び、多様な作品を生み出しす。また、東京大学教養学部で開講されている「個と群」(文理融合ゼミナール)では、受講者が野老と東京大学の舘知宏と協働し「個と群」の創造プロセスを実践している。本展ではそのスピンオフとして、かたちをつくることから始まる学術の連鎖を紹介。

「ICCアニュアル2023 ものごとのかたち」開催概要

期間2023年6月24日(土)から2024年1月14日(日)まで
会場NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]ギャラリーB
時間11:00 ~ 18:00
入場一般 500円(400円)、大学生 400円(300円)
オンラインハイパーICC
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