高円寺の老舗銭湯「小杉湯」が国の登録有形文化財に
昭和8年に創業し、87年の歴史をもつ高円寺の老舗銭湯「小杉湯」(高円寺北3丁目32番2号)は2021年1月、国の登録有形文化財(建造物)に登録された。「小杉湯」は小山惣太郎によって昭和8年に建てられた。小杉湯の名前の由来は “小山が杉並区で創業をしたから” だという。平松吉弘が新潟から上京し様々な商売で貯蓄した資産と借金を合わせて「小杉湯」を昭和28年に購入。その後、長男の松茂へと継承。そして2016年10月10日(銭湯の日)、三代目として平松佑介が「小杉湯」で働きはじめる。
1998年、東京都に1,248軒あった銭湯の数は2017年に600軒を割り込み、現在は500軒近くにまで減少している。小杉湯は東京都内では今や数少ない老舗の銭湯である。三代目が小杉湯で働き始めて5年が経とうとしている。初代の影響を受け継承した二代目と違い、三代目は初代である祖父が働いている姿を見たことがない。楽しそうに働いている両親の姿や、小杉湯を愛してくれている地域の方たちの姿に影響を受けている。だからこそ「小杉湯」に関わる人の姿や想いを、目に見える形で残し続けていく必要性を三代目である平松佑介は見出した。
「小杉湯」は87年間、建て直しをしていない。関東大震災以降に建てられた銭湯は、神社仏閣の工法で再建された「東京型銭湯」と言われる外観の特徴を持つ。1963年と1971年、1989年に増築を繰り返し、2004年に改修、2020年11月には浴室壁の大きな富士山をリニューアル。修繕を経ながら営業を継続してきたが、外観はそのままだ。
修繕をし続けようとどれだけ順調に生計を立てていようと、日に日に廃れていく箇所もあれば、明日どこかが故障すれば修理に多額のお金が必要になってしまうこともある。現在、その修繕費用の一部は国の助成金によって賄えているが、世の中が大きく変わり続けていく中で、その救いがいつなくなってしまうかはわからない。何かを残し続けていくということには、その時間と共に、何を守り続けていくかが問われる。その記しとして、「小杉湯」は国の登録有形文化財のひとつとなった。