「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」が東京国立近代美術館で開幕

新型コロナウイルス感染拡大を受けて延期されていた「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」が、東京国立近代美術館で2021年6月18日(金)から9月26日(日)まで開催される。米TIME誌にて「2019年世界で訪れるべき最も素晴らしい場所100選」に選ばれた《V&Aダンディー》や《国立競技場》の設計に参画するなど、現代日本を代表する建築家のひとりである隈研吾。

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「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」

本展では、世界各国に点在する隈作品の中から公共性の高い68件の建築を、隈が考える5原則―「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」に分類し、建築模型や写真やモックアップ(部分の原寸模型)により紹介。その他、映像作品、前庭に展示されるトレーラーハウスを合わせ、合計74件で隈の世界を紹介する。本人による章解説や作品解説のほか、瀧本幹也や藤井光など第一線で活躍するアーティストによる映像作品や、隈建築をさまざまな観点から鑑賞できる空間、また360度VRなどの体感要素、さらに、ネコの視点から都市での生活を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》(Takramとの協働)も発表する。

隈研吾に聞く「新しい東京の姿を求めて――ネコの目線がもたらす街づくりとは」

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隈研吾

1964年の東京五輪で「国立代々木競技場」を設計した丹下健三。僕が「建築家になろう」と決心したのは小さい頃にその代々木競技場を初めて見た時でした。その丹下さんは1961年に「東京計画1960」という東京の都市計画を発表しました。人口の増加と経済発展で住む場所が飽和し、東京湾の上に住宅地を造るという都市計画でした。高度経済成長期の非常に壮大で未来志向の、右肩上がりの時代の都市計画でした。それから60年がたち、奇しくも次の東京オリンピック・パラリンピック開催が開催される日本は、少子高齢化で経済は伸び悩むという、60年代とは全く別の様相を呈しています。その中で、僕は逆の幸せの形を模索しました。建物は低くして、木や石など自然の素材を使った建築です。右肩下がりの時代に以前と同じようなコンクリート造の高そうな建築を目指すのは、個人的には恥ずかしいと思っているからです。丹下さんとは逆の都市計画とは何か。その時に考えたのが、人間がもう一度ネコのように小さくなって、地面の近くをはい回ることではないかと。丹下さんの都市計画が「神の視点」、上からの目線だとすると、僕は徹底的に下から目線の極地で都市計画をとらえてみようと思いました。それが「ネコの視点」なのです(2021年5月7日、隈研吾建築都市設計事務所で本人談)。

公益財団法人 隈研吾建築奨学財団を設立、2021年度の奨学生募集を開始

隈研吾は2021年2月1日付で、日本で建築学を学ぶ大学院生を対象に、返済不要の奨学金を支給する目的で、「公益財団法人隈研吾建築奨学財団」を設立。「コンクリートと鉄に支配されていた工業化社会の建築に代わって、自然と人間とをつなぎなおす新しいデザインが求められている。その担い手となる若い才能の発掘、支援を目的として、コロナ禍の中、財団設立を決意した」と語る隈研吾。2021年度の奨学生募集は4月1日に開始し、5月末まで受け付けている。日本国内で建築学を学ぶ大学院生(留学生を含む)のうち、「学業、人物が優秀でかつ健康である者」15人を選抜し、21年4月から23年3月まで月額5万円を支給する内容。詳しくは財団ウェブサイト「募集要項」参照。

「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」 開催概要

会場東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期2021年6月18日(金)から9月26日(日)まで
開館時間10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00) *入館は閉館30分前まで
観覧料⼀般 1,300円 大学生 800円 *高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。