ヨーロッパ最大の都市文化開発プロジェクトのひとつ「民族学博物館」をナプール・アーキテクトが設計

ヨーロッパ最大の都市文化開発「リゲト・ブタペスト・プロジェクト」の一環として建てられたブタペストの新しい民族学博物館は、ハンガリーの建築事務所 ナプール・アーキテクトがデザインを手がけた。シンプルかつダイナミックなラインを描く建物は、公園の風景と調和しながら周囲の都市地域との交流を図る、カルチャーハブとなる。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

リゲト・ブタペスト・プロジェクトは、ブタペストの100ヘクタールの市立公園の包括的な開発を目指しており、公園の緑地やレクリエーション機能、そして数百年の歴史を持つ施設の改修や拡大を含んでいる。プロジェクト完了時には、この公園は150年もの年月をかけて開発された、ヨーロッパ最大の文化地区のひとつとなる。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @gyorgypalko

民族博物館のコレクションは、1896年にブタペスト市民公園で開催されたミレニアム・エキシビションで初めて公開された。ゆかりの地、ブタペスト市民公園に建設されることになった新しい民族博物館は、カルパチアン盆地と世界各地から集められた25万点のアイテムを収蔵している。このコレクションは、1872年の設立以来、さまざまな施設で収容・展示されてきたが、どれも博物館に適した設計の建物ではなかった。特に、博物館の現在の場所は、かつてハンガリーの最高裁判所が置かれていた場所で、博物館の要件を満たしておらず、スペースと機会の面で厳しい制約があった。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

国際的なデザインコンペによって選ばれたナプール・アーキテクトの雄大でモダンなデザインの建物は、2022年5月に完成。民族学博物館はついに、コレクションと訪問者のニーズに高い基準で対応できる最適な場所を与えられたのである。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

ナプール・アーキテクトの動的でシンプルなデザインは、コンペにて国際的な審査員を魅了した。それを裏付けるかのように、その後も多くの賞に輝いている。2017年のMIPIMアワードでは、ヨーロッパのベストメガフューチャープロジェクトに選ばれ、2018年の国際不動産賞では、世界最優秀建築のタイトルを獲得。2017年のMIPIMアワードでは、ヨーロッパのベストメガフューチャープロジェクトに選ばれ、2018年の国際不動産賞では、世界最優秀建築のタイトルを獲得。既に大陸で最も魅力的な現代建築物の一つとしてとして認知されているのである。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @gyorgypalko

公園の自然環境と調和しながら、周囲の都市のテクスチャとも連携するデザインは、優雅な曲線を持ち、都市と公園をつなぐゲートウェイとして機能する。建物の60％は地下にあり、屋上部分はランドスケープと一体化している。芝生で覆われた屋上エリアは、公園への訪問者を迎える心地よいコミュニティスペースとなっている。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

地上部分の建物は透過性が高く、存在感を示しながらも周囲に溶け込んでいる。このデザインで特筆すべきポイントは、屋上庭園を取り囲むガラスのカーテンウォールで、二つの絡み合った丘を連想させる形状だ。これは、博物館のコレクションの民族学的なモチーフを基にデザインされた50万ピクセルもの金属グリッドで作られている。ピクセルは、特注ロボットによってレーザーカットされたアルミニウムのグリッドに取り付けられ、これが2000個以上、建物全体に装着された。これらの小さなキューブは、20のハンガリーと、20の国際的な民族的モチーフを現代風に再解釈したデザインとなっている。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @gyorgypalko

建物の象徴的なデザインとなっている、アーチ状のウイングは、橋の建設に使用されるプレストレスト構造によって支えられている。この技術の公共建築物での応用は、ハンガリーだけでなくヨーロッパ全体でも非常に珍しいものである。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @inczelaszlo

博物館は、21世紀の博物館運営の在り方において、最先端の取り組みを可能にする。社会対話、コミュニティ運営、アクセシビリティ、多様性、透明性、持続性、経験主義などが機能面や方法論的姿勢に反映されている。求められる機能を最大限に考慮して設計されているため、大規模で近代的なだけでなく、ユーザーフレンドリーな施設運営を可能にしている。ハンガリーだけでなく世界中から結集したコレクションを、魅力的に多様な形で展示することができ、我々人類の物質的・精神的遺産とその歴史への理解を深めることができるのである。

The New Museum of Ethnography, Budapest by NAPUR Architect, Photo credit: @gyorgypalko

NAPUR Architect Ltd（ナプール・アーキテクト）について

ナプール・アーキテクトは、1992年設立の設計事務所。設立以来、コンセプト立案から完成までの一貫したプロジェクトを手掛け、数十年にわたるキャリアを積んできた。高い品質の建築作品を数多く手がけ、国際的な賞にも幾度となく輝いている。公共建築物、スポーツ施設、文化施設、特注住宅の建築およびインテリアデザインなど、幅広く手掛けており、すべてにおいて一級品のターンキープロジェクトを実行。真似することのできない独自の外観と機能を持つプロジェクトを国内外のクライアントに提供し続けている。