タイのヴィン・ヴァーバーン・アーキテクツによるデザインの「PANNAR経済農業学習センター」が建設

タイ東北部のナコーン・ラーチャシマにある「PANNAR経済農業学習センター」は、タイの国王ラーマ9世(故 プーミポン・アドゥンヤデート)が推奨した「足るを知る経済」哲学の啓蒙と普及を目的に建設された。岩ばかりの乾燥地帯だったこの地は、農業開発によって、畑、貯水池、菜園、果樹園、そして動物を飼育するエリアなどを擁する農業地帯に生まれ変わった。本プロジェクトは、タイの建築デザイン事務所ヴィン・ヴァーバーン・アーキテクツがデザインし、Dezeen Awards 2021の文化施設カテゴリーでショートリストに選出された。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-2

Exterior view from North West toward the Activity Center's canteen

この10年、技術の革新や経済・社会格差、自然災害、天然資源の減少、文化摩擦などが原因で起こっている様々な難しい局面に加え、昨今はパンデミックによる世界危機があった。このような状況下で、タイの未来を照らす希望の光となっているのが、1974年に故 プーミポン・アドゥンヤデート国王が提唱した「足るを知る経済」の哲学。この哲学には、知識と美徳が人々に節度と慎重さをもたらし、未知数の変化や危機に対抗できる社会的免疫力をつけることができるという信念に基づいている。全ての利害関係者の利益を最大化し、長期的な収益性に重点を置くことを強調する考え方は、持続可能な農業や経済に繋がる。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-6

Arial View of Activity Center and the restroom building

「足るを知る経済」哲学の信念を受け継いで建設された本プロジェクトは、アクティビティセンターとサービスセンターの2つで構成されている。アクティビティセンターは、100人を収容することのできる多目的スペースを完備した2階建ての建物。1階にはロビー(受付)、ワークショップやセミナーが行える部屋、カフェテリア、大きなキッチンが配置されています。2階には、オフィスやミーティングエリア、制御室がある。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-15

The interior view of the Canteen space

「足るを知る経済」哲学は、本プロジェクトの建築にも反映された。田舎の住居に見られる伝統的な竹小屋にこだわる必要があるのか悩んだ末、建築チームは、伝統を尊重し、環境に調和した現代的なデザインに辿りついた。地域の素材と伝統的な職人技を採り入れて、それを現代的なデザインへと昇華させることで、今日の生活に適した耐久性のある魅力的なデザインが完成した。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-10

Exterior view of the Activity Center from the South at night

広大な畑に囲まれたアクティビティセンターは、自然光に溢れ、自然循環による換気が行える、地域に開けたランドマーク的な存在。この地で育った竹でできた大きな屋根は、雨水を集めて周辺の小さな水路に給水する役割を担っている。雨水は、経由する他の地域にも水をもたらしながら、干ばつ対策のための貯水池に辿り着く仕組みとなっている。この地の土を使って地元の職人が仕上げた自然な色合いの土壁は、地域の素材と技術を現代の生活に合わせた使い方に活かすという点で「充分性」の考え方をしっかり受け継いでいる。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-11

Exterior view of the Activity Center from the South

サービスセンターは、トイレなどの設備に求められる清潔さと窮屈さの課題を克服するべく、施設を使いたい、訪れたいと思ってもらえるデザインが考えられた。地元産のレンガを使ってカーブした壁を二重に構築。トイレは外郭に設置され、個室以外のスペースを充分に確保した。レンガの壁の間にできた空間はプライバシーを確保するとともに、自然光を効果的に採り込み、自然換気も促すことで、湿気がこもるのを防ぐ。

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-20

Exterior view from the North West

adf-web-magazine- pannar-sufficiency-economic-agriculture-learning-center-22

Exterior view of the Restroom from the North East

二つの建物は、建築は生きる科学であり、常に進化するものであることを示唆している。変わり続ける人々のニーズに応えるべく、新しい技術をもって革新し続けていく必要がある。


sdgs