すべての空間が互いにシームレスに溶け合う遊び心に溢れた場所
KSMアーキテクチャーがインド・チェンナイにホームスクーリングなどの不登校型の教育を受ける子供むけの学習支援施設「クエスト」を完成させた。海辺から300メートルほど、5402mの土地に位置するこの施設は8歳から16歳までの子供たちが対象で、カリキュラムではなく興味に基づいて学ぶ子供たちのための学習・交流スペースとしての役割を担っている。
この学習支援施設は、空間と視覚的なつながりを感じられるよう、自由に流れるボリュームの集合体として設計されている。建物へは階段とスロープのある並木道の前庭から入る。中央の長方形の建物の敷地に入ると、吹き抜けのようなボリュームが建物の高さいっぱいに広がり、右側には円形劇場、左側にはギャラリースペースがある。
建物はチェンナイの風向きに沿って南に向かって開いている。敷地の南側が庭のように高くなっているのは、南風を利用するためであると同時に、敷地の向こう側に伸びる道路による風の通り道を利用するためでもある。円形劇場は、南側の盛り上がった庭を見下ろすシームレスなボリュームとして、出入り口と上部の図書館をつないでいる。
庭へは図書館を起点とする滑り台でアクセスできる。中央のアトリウムの両側には5つの教室が積み重なり、このアトリウムの内側の金属製の階段が各階をつないでいる。階段は4階で建物の外に出て、屋上のカフェテリアに続く螺旋階段の寮に面し、その階段は南側の景観の良いテラスに面している。
気候の影響を考慮し、建物の東側と西側の壁は開口部を最小限に抑えた断熱空洞壁として設計されている。一方、南側と北側の壁には、周囲の南風を取り入れる全面開閉式の窓があり、垂直のアルミ製エアロフォイル型ルーバーで遮光されている。東と西の壁は幅400mmの複合壁で、内層として厚さ50mmのXPSインフィルを使った幅300mmの空洞壁と、25mmの空洞を持つ自己遮光スキンとしての竹シャッターGFRCファサードパネルで構成されている。この断熱システムにより、この壁に降り注ぐ熱はほぼ遮断される。
開放感があり、空間や容積の明確な区分けはなく、すべての空間が互いにシームレスに溶け合い、その向こうには庭園が広がっている。まぶしさを感じさせない自然光の暖かな輝きが陽気な雰囲気を作り出し、色使いによって遊び心が強調されている。
KSMアーキテクチャー
1990年に設立。シンプルな設計を信条とし、その環境の中にデザインを根付かせることを得意とする。環境の持続可能性を進める材料や技術に関する継続的な研究と革新的な実験を積極的に行っている。各プロジェクトをエネルギー効率を高め気候条件に効果的に対応できるよう、細心の注意を払って設計。環境に配慮したミニマルな建築アプローチで国内外から高い評価を得ている。