自然と調和するオランダ発のキャビン「ANNA」が革新的な構造で建築の概念を刷新する
オランダ人デザイナーのキャスパー・シュルツがデザインを手掛け、ダイナミックな構造が注目を集めた木製キャビン「ANNA」が、世界最大規模の建築賞、A+アワード2021の年間プロジェクト賞を受賞した。また、住居(小規模)部門でも審査員賞を受賞し、国際的な栄誉に輝いた。
ANNAは、オープンなプラットフォームに、可動式のガラス張りの内壁と、木製の外壁を設置した、あらゆる気候の変化や目的に対応できるキャビンである。一見、何の変哲もない小屋に見えるこの建物は、壁がスライドすることで、住空間と外を隔てるものがなくなる。一瞬にして住空間が自然と一体になる構造だ。

Though it looks like a normal cabin at first glance, the unusual dwelling's walls can be slid apart to open it up to the outside, allowing its owners to embrace a semi-outdoor lifestyle. Photo credit: Jorrit 't Hoen
自然と分断するのではなく、自然要素と共存しながら、自然の中で生活する。これがANNAの本来の目標である。「ANNAを住居として、そして自然としてとらえることで、自然と自分とのダイナミックな交流が生まれるのです。」とシュルツは言う。
ふたつの壁には車輪がついており、床に内蔵されたレールの上を移動する。内側のガラス張りの木枠の壁は、外側の屋根つきの木枠の壁とは分離しており、気分や用途に応じて空間に変化をつけることができる。「気候に応じて洋服を変えるように」変幻自在なダイナミックな構造は、建築に柔軟性をもたせる新たな発想である。
建築を学んだ経験がなかったシュルツは、2016年、自身の母親のためにキャビンの製作にとりかかる。人間と自然、住居をダイナミックに繋げることをコンセプトに、空間の構成を考えた。母親が読書や描画を楽しんだり、夕食を準備したり、訪れた孫がパフォーマンスを披露できたりと、あらゆるシチュエーションの実現が可能な空間を構想した。このようにして編み出されたオリジナルのデザインは、短期的もしくは長期的滞在に向けて進化し、「ANNA Stay」として商品化されている。
オリジナルのデザインは、多数の国際メディアで取り上げられ、ダーク・ローゼンバーグ・アワード(アイントホーフェン)、ラディカル・イノベーション・アワード(NY)、Dezeen年間スモール住居アワード(ロンドン)などを受賞。オランダでは、2017年の人気建築プロジェクトのトップ3にランクインした。
キャスパー・シュルツについて
2015年、アムステルダム大学で物理学の修士号を取得。ヘリット・リートフェルト・アカデミー・オブ・アーツにて学び、英国建築協会付属建築学校に奨学生として2016年から2019年まで在籍する。現在は、キャビンANNAをはじめ、多数のアートや建築のプロジェクトに携わっている。