癒しをかたちにする新しい青少年更生センター
ACDFアーキテクチャーがスタンテックと協働で、カナダ・ケベック州サント=テレーズに新しい青少年更生センター「Centre de réadaptation pour jeunes en difficulté d’adaptation(CRJDA)」をて手がけた。本プロジェクトでは従来の管理や監視を重視した制度的な建築とは異なり、尊厳・共感・信頼を軸に据えた新しいケアの空間が提案されている。

View of the passage connecting the living units to the institutional wing housing the educational spaces, health professionals’ offices, temporary detention center, and gymnasium.
Photo credit: Adrien Williams
建物は硬質な秩序性を拒み、やわらかな曲線と穏やかな水平ライン、自然素材と淡い色調をまとって、人間的で温もりのある雰囲気を醸し出す。病院のような無機質さではなく、むしろ住まいに近い安心感を与えるデザインとなっている。

Classroom integrating an alternative teaching space that fosters calm and relaxation.
Photo credit: Adrien Williams
構成は4つのウィングに分かれ、エントランス側には教室、体育館、図書室、職員エリアを含む教育・支援棟が置かれ、背後には3つの居住棟が並ぶ。各教室の入口には異なる色が使われ、利用者が直感的に場所を認識できるよう工夫されている。柔軟な学習スペースやアルコーブ、ソフトシーティングも配置され、多様な集中力や感情状態に対応する空間構成となっている。
教育棟と居住棟をつなぐ光に満ちた通路は、単なる移動経路ではなく学校と家庭、構造とプライバシーを結ぶ象徴的な「しきい」として機能し、庭やテラスの眺めを取り込みながら移動そのものを穏やかな体験へと変えている。
居住エリアでは、建築の優しさがより具体的に表現された。木の質感と柔らかな光に包まれた個室は安心感を生み出し、共有スペースは対話とつながりを促す。スタッフのオフィスは中央に配置されつつも控えめで、監視ではなく寄り添う存在として機能している。
厳格な安全基準と人間的な温かさを両立する設計も特徴的で、造り付け家具や視線の抜け、緊急動線などが巧みに組み込まれ、利用者の尊厳を守りながら安全性を確保している。セキュリティは「見せる」ものではなく、空間構成の中に静かに織り込まれている。
建物の外には、心身の回復を促すリハビリテーション・ランドスケープが広がる。スポーツエリアや遊び場はエネルギーを発散させ、森林の小径や湿地を望むエリアは思索や静寂の時間を提供する。敷地を囲む密な植栽帯はフェンスを隠し、境界を柔らかく包み込み、閉塞感のない穏やかな雰囲気をつくり出している。
この施設は隔離の場ではなく『人生の移行期を支える「通過の場」』であり、若者とスタッフの双方にとって、再出発のための安定と自己回復を促す環境が提供されている。
素材の優しさ、光の扱い、そして空間の緻密な関係性を通して、CRJDAは新しい社会的建築のあり方を体現している。治療や管理のためではなく、信頼を再構築するための建築——それがこのプロジェクトの核心である。
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
- Photo credit: Adrien Williams
ACDFアーキテクチャー
商業施設、住宅、ホスピタリティ、インテリア、マスタープランニングなど、意欲的でデザインに精通したプロジェクトを手がけるACDFは、カナダで最も先進的な建築事務所のひとつ。マキシム=アレクシス・フラピエ、ジョアン・ルノー、エティエンヌ・ラプラント・クールシュヌの指導のもと、同社が手がける大規模プロジェクトの調和のとれたデザインは、次世代に向けた意義深く影響力のある建築への先進的なアプローチが評価され、多数受賞している。

日本語
English



















