宇宙と芸術が交差する種子島で未来へのまなざしを共有する

鹿児島県・南種子町を舞台に「種子島宇宙芸術祭2025」が2025年11月8日から24日まで開催される。JAXA種子島宇宙センターを擁するこの地で、宇宙と自然、そして人間の想像力が交差する時間が生まれる。今年のテーマは「予感」。国内外で活躍するアーティスト22組が参加し、インスタレーションやパフォーマンスなど31点の作品を展示する。

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Artist:NIL.  Location:南種子町  Photo:Hirohiko Koyamada

宇宙を芸術で読み解く試み

種子島宇宙芸術祭は、科学技術の最前線にある南種子町から「文化と芸術の視点で宇宙をとらえる」ことを目的に始まった。宇宙センターを背景に、島の自然と調和する作品群が点在し、観る者の感性を刺激する。会場は町内4カ所に分かれ、夜の宇宙ヶ丘公園では光・音・身体表現が融合したパフォーマンスが繰り広げられる。

千田泰広が導く「光と音の旅」

今年注目を集めるのは、アーティスト千田泰広によるライトアート《Momentary scapes(瞬間に宿る永遠)》。JAXA種子島宇宙センター屋外エリアを舞台に、アコースティック・アーティストの宮木朝子とともに展開する「Art and Audio」ツアーでは、音響機器を装着しながら作品と向き合う新しい鑑賞体験を提案する。光と音が呼応し、静謐でありながら宇宙的な拡がりを感じさせる体験となる。

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「Aftereal」2024 Artist : Yauhiro Chida Photo:株式会社シイツウ

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千田泰広
©-Marie-Cecil

星を映す洞窟、宇宙を見上げる心

もう一つの見どころは、プラネタリウム・クリエーター大平貴之による《スーパープラネタリウム星の洞窟》だ。海蝕洞窟・千座の岩屋で1000万個の星を投影し、自然とテクノロジーの融合を体感させる。宇宙の人工的な美と種子島の自然の闇が溶け合い、訪れる人々に「地球の中の宇宙」を意識させる。

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[スーパープラネタリウム星の洞窟] Artist:大平貴之

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大平貴之

世界と種子島を結ぶアーティストたち

会期中は国際的に活躍するアーティストたちの作品が島全体に点在する。FLIGHTGRAFや黒川隆介が繊細なデジタル表現で宇宙的スケールを描き、篠田守男や開発好明が物質の存在と空間性を探る。

中元悠仁や平川渚は自然と記憶をテーマにした映像作品を発表し、吉本英樹(TANGENT)はデザインエンジニアリングの観点から「未来のかたち」を提示する。また、地域と共に活動する「うきも-project-」や「いいものつくり隊」などの参加により、芸術祭は島民との協働による創造の場へと発展している。アーティストNILによるパフォーマンスは、島の夜を舞台に人間と自然、現実と幻想を往還する身体表現として注目を集めるかもしれない。

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中元悠仁

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平川渚

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吉本英樹

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うきも-Project-

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いいものつくり隊

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NIL

種子島が見せる未来への「予感」

「予感」というテーマには、未知との出会い、そして人と宇宙、自然とテクノロジーの新しい関係を探る意志が込められている。科学と芸術の融合によって、島の風景が巨大な作品へと変わる。星空の下で、光、音、そして人の感情が共鳴する。宇宙を「遠いもの」としてではなく、「感じるもの」として体験する芸術祭を種子島宇宙芸術祭2025は目指している。

「種子島宇宙芸術祭2025」

会期2025年11月8日(土)から11月24日(月・祝)まで 
会場鹿児島県熊毛郡南種子町
URLhttps://satfes.jp/