旧歯学・薬学棟を柔軟性の高い学際的な交流拠点へと刷新し、学び、協働、コミュニティ形成を促進する空間へ
カナダ・エドモントンにあるアルバータ大学が、かつて歯学部と薬学部が使用していた建物を再開発する大規模プロジェクト「University Commons」を完成した。Zeidler Architectureが設計を手がけたこの延床面積40万5,000平方フィート(約3.8万平方メートル)の改修計画は、築100年以上の建物を大学の新たな学術・交流拠点へと再構築するものであり、開放性、アクセシビリティ、そして学際的な交流を重視した空間へと刷新している。
ノースキャンパスの主要な入口に位置するUniversity Commonsは、実用面と象徴性の両面を担う存在として整備された。大学の新たな玄関口として機能すると同時に、学生、教員、研究者、職員が学び、協働し、交流できる環境を創出している。この再整備は、分野横断的なつながりを促進する柔軟な学習環境を重視する、高等教育をめぐる新たな潮流も反映している。
計画当初から、学部や組織の垣根を越えた交流を促進することが大きな目的とされた。従来の区切られた構成は見直され、オープンオフィス、柔軟性の高い教室、共同作業スペース、広がりのある動線へと再編されることで、より一体感のあるキャンパス体験を実現している。
デザインは、「知識の樹」や共同体の集まりといった概念から着想を得ている。建物中央には大規模なアトリウムを配置し、複数階にわたる人の流れを整理しながら、自然光を建物内部へ取り込む役割を担う。そこから学習空間や共有エリアへと動線が広がり、利用者同士の交流や視覚的なつながりを促している。
さらに建物の四隅には、非公式な交流を生み出す吹き抜け空間を配置した。季節をテーマにしたこれらの「Neighbourhood」は、用途を限定せず、自然発生的な出会いや協働を生み出す場として計画されている。
施設全体では、包括性とアクセシビリティが重要な設計指針となった。学生支援機能、学術部門、大学運営機能、学習スペース、会議室、プロジェクトエリアを一か所に集約し、制度的・物理的な障壁を減らすことを目指している。
インテリア設計も、多様な学習スタイルへの対応を重視した。モジュール型教室によって柔軟な授業運営を可能にするとともに、ラウンジや一般利用可能な会議空間を設けることで、学生と教員の間に存在した従来の境界を緩やかにしている。素材、音響計画、家具の選定にも配慮し、快適性と柔軟性を両立する空間づくりが進められた。
集中や精神的なリフレッシュを目的とした空間も整備されている。その一例である「Calming Room」は、感覚刺激に配慮した環境として計画され、大学全体を対象とした学生デザインコンペティションを通じて実現した。学生が実践的な課題解決に参加する機会にもなっている。University Commonsは、交流の場であると同時に、個人が静かに過ごせる居場所としての役割も担う。
また、この施設では先住民の文化的な物語も重要な要素となっている。メティス出身アーティスト、クリスティ・ベルコートの作品が館内各所に配置され、共有空間に文化的な背景や地域とのつながりを織り込んでいる。先住植物や伝統的な知識体系から着想を得た作品は、コミュニティ、場所、歴史との関係性を可視化する役割を果たしている。ベルコートは、カナダの現代アート界を代表する存在として知られ、主要な文化機関で作品が収蔵されるほか、芸術とイノベーションへの貢献によって高い評価を受けている。
今回の改修ではBuilding Information Modelling(BIM)技術を活用し、複雑な工事工程の調整や建築システムの統合、分野横断的な協働を効率的に進めた。
現在、University Commonsは学生、教職員、来訪者に向けて公開されている。歴史的な大学施設を現代的な学習環境へと再生することで、アルバータ大学は、これからの教育やコミュニティ形成のあり方に対応する新たなキャンパス空間を創出した。

日本語
English



















