多層的な光と声が響き合う16日間のプログラムを発表

映像とアートの国際フェスティヴァル「恵比寿映像祭2026」が、2026年2月6日から2月23日まで東京都写真美術館を中心に開催される。今年のテーマは「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」。展示、上映、パフォーマンス、コミッション・プロジェクト、地域連携など、多彩なプログラムが用意され、国内外30組以上のアーティストが参加する。

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張恩滿《蝸牛樂園三部曲—啟航或終章》(2021)高雄市立美術館蔵

総合テーマ「あなたの音に|日花聲音| Polyphonic Voices Bathed in Sunlight 」

いま社会は多様性の尊重を重視している一方で、人、文化や言語などの間にはたとえ共通点があったとしても、誤解、誤読は生じる。そして、戦争は止まず、格差は埋まらず、さまざまな摩擦の終わりが見えない。アンバランスで複雑な社会状況に直面している。恵比寿映像祭2026の総合テーマは、メインキュレーター・邱于瑄(Chiu Yu-Hsuan / チィウ・ユーシュェン)による台湾語が起点。台湾語は口承で広がった言語で、19世紀に生まれた発音記号や、20世紀の漢字表記の展開を経て、多くの文献が編まれた。(その中には1931年に出版された、台湾語–日本語の辞書『台日大辞典』なども含まれる)日本語とも共通点が多く、いくつかの表記法が混在している言語。ひとつとして同じものがないさまざまな声音が響く空間に、木々の間から洩れた光が差し込む様子を現している。長い歴史の変遷によりさまざまな文化が積層した台湾の言葉を導線に、いまの社会に存在する多様な文化、言語などが互いに影響し合う複層的な形に柔らかく光を注ぐ思いで、恵比寿映像祭2026を構成している。

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侯怡亭《所有的小姐 Sóo-ū -ê sió-tsiá》(2015)作家蔵

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重なり合う形と声:展示プログラム

東京都写真美術館のB1F・1F・2Fを会場に、人類学的な視点から「声」「環境」「記憶」「誤読」をテーマとした展示を展開する。チャン・エンマンは、移動と定着を繰り返す存在をカタツムリに託した大型インスタレーションを発表。ホウ・イーティンは台湾語の歌詞を刺繍する作品で、言語と記憶を可視化する。鶴巻育子は視覚障害者への聞き取りを基に、「見ること」を再考するプロジェクトを提示。田中未知と高松次郎による言語楽器《パロール・シンガー》も再構成される。

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鶴巻育子《人は影になる》(2024)

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田中未知/高松次郎 言語楽器《パロール・シンガー》(1974)東京都現代美術館蔵 Photo by Norihiro Ueno


新しい才能と出会う:コミッション・プロジェクト

東京都写真美術館3Fでは、日本を拠点とするアーティストへの制作委嘱事業「コミッション・プロジェクト」の成果を公開する。小森はるかが新作2本を出展し、見過ごされがちな風景や人々の営みに光を当てる。また、次回ファイナリスト4名の発表も予定している。

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小森はるか《春、阿賀の岸辺にて》(2025)恵比寿映像祭2025コミッション・プロジェクト特別賞受賞作品[参考図版]

街にひらかれるアート:オフサイト展示

恵比寿ガーデンプレイスや恵比寿スカイウォークでは、都市空間を舞台にした屋外展示を実施。FAMEMEの新作《Duri-grance》がスカイウォークを彩り、エキソニモは巨大LEDウォール版《Kiss, or Dual Monitors》をセンター広場に出現させる。東京都写真美術館2Fには、来場者が参加できる撮影ブースも設置される。

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FAMEME《Duri-grance by FAMEME》(2026)Courtesy of the Artist

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エキソニモ 《Kiss, or Dual Monitors》(2017)東京都写真美術館蔵[参考図版]

映像を“視る&聴く”:上映プログラム

東京都写真美術館1Fホールでは、特別編成の上映プログラムを連日開催する。小森はるかの作品上映に加え、大木裕之の追悼特集や、言語と会話のズレをテーマとする河合健《みんな、おしゃべり!》、モーガン・クウェインタンスの短編特集などを実施。上映後には監督やゲストによるトークも行われる。

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河合健《みんな、おしゃべり!》(2025)©2025 映画『みんな、おしゃべり!』製作委員会

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大木裕之《meta dramatic 劇的》(2023)東京都写真美術館蔵

重なり合う声と身体:ライヴ・イヴェント

展示作品と連動したトークやパフォーマンスも多数予定されている。キュンチョメ、鶴巻育子、アンジェリカ・メシティによるアーティスト・トークに加え、トモコ・ソヴァージュの《Waterbowls》や、ホウ・イーティンとボーカルパフォーマーの共演によるライブ刺繍を初開催。また、鶴巻による鑑賞ツアー、チャン・エンマンによる原住民文化のワークショップ、劇団ゴツプロ!×峸劇場による演劇《拝啓》の上演も行う。

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ゴツプロ!×峸劇場 共同制作《敬啓者》(拝啓)(2025)Photo by Rosaline Lu, Courtesy of 山峸製作設計

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トモコ・ソヴァージュ(WOSxSONEGにて、2018)Photo by Leo Lopez, Courtesy of the Artist

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張恩滿によるワークショップ [参考図版] Courtesy of the Artist and Singapore Art Museum

語り合う:シンポジウム

国内外の研究者、キュレーター、アーティストが登壇し、4つのテーマで討議するシンポジウムを開催。コミッション・プロジェクトやアーカイヴの役割、多声的な言語、映像表現の現在地、そしてデジタル文化の継承に焦点を当て、映像と写真の未来を多角的に探る。adf-web-magazine-yebisu-art-visions-fes-2

東京都のコレクションを特別公開

東京都写真美術館3Fでは、東京都の美術館が所蔵する映像・写真・資料から、テーマに呼応する作品を紹介する。エキソニモの《Joiner – Collage Camera》や、さわひらき《pilgrim》、昭和中期の《カメラ双六》などが展示され、歴史と現代が重なる視点を提示する。

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全日本写真材料商組合連合会《カメラ双六》(昭和中期)東京都江戸東京博物館蔵

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さわひらき《pilgrim》(2022)東京都庭園美術館蔵

文化が響き合う都市ネットワーク:地域連携プログラム

日仏会館やCCBTをはじめとする18の文化施設が参加し、恵比寿の街全体でアートと映像が展開される。飲食街やバーとのコラボ、オリジナルグッズがもらえるシールラリーなども実施され、来場者は昼から夜まで街を巡りながら多様な作品に出会える仕組みとなっている。

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ye(b)izoちゃん©︎ひらのりょう

恵比寿映像祭

平成21(2009)年の第1回開催以来、年に一度恵比寿の地で、展示、上映、ライヴ・パフォーマンス、トーク・セッションなどを複合的に行ってきた映像とアートの国際フェスティヴァルです。映像分野における創造活動の活性化と、映像表現やメディアの発展をいかに育み、継承していくかという課題について広く共有する場となることを目指してきました。近年では、地域とのつながりや国際的なネットワークを強化し、一層の充実と発展をはかっています。adf-web-magazine-yebisu-art-visions-fes-19

「恵比寿映像祭2026」開催概要

日程2026年2月6日から2月23日まで
会場東京都写真美術館など
URLhttps://www.yebizo.com/