「KUMA selection2024」第5弾

クマ財団の活動支援生11名にクマ財団ギャラリーを自由に利用する機会を提供し、自身の創作のプレゼンテーションを行うシリーズ企画「KUMA selection2024」。その第5弾として、山縣瑠衣による個展「風景記譜法」が2024年7月12日(金)から7月15日(月)まで開催される。「風景記譜法」では山縣瑠衣の2022〜2024年に制作された主要な作品を展示される。adf-web-magazine-kuma-selection-yamagata-rui-3

山縣は2022年修了制作「地表の掻き傷」シリーズを皮切りに、衛星画像からなる地図表現と現代の風景画への関心を立ち上げ、以降ペインティングや映像で作品を発表。山縣自身の関心は人工衛星のようなリモートセンシング技術とパワーポリティクスの中で実現されている視覚の中に、自身が座標や画素という形をとって存在しているという点にある。そうした関心は、地上に立つことの意味と経験をいかに捉え直すかという試みに接続してきた。昨今の侵攻の情勢下で、「風景を獲得する」ことと攻撃や所有の結びつきがさらに強まる中、「獲得法」(風景画の描きかた)ではなく身体への関心から「記譜法」という言葉が選ばれる。個人の内部に起きた経験を獲得し、痕跡として表現し、そこにあった身体を他者が辿ることを可能にする。山縣自身が絵画に託してきた部分を感じ、観ることができるかもしれない。

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《地図作製用ペン先調整A (模写)》2024

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.《画素と屋根 pixel and roof》2023(撮影:松見拓也)

本展では、2022年〜2024年までに制作した主要な作品を一堂に展示します。2022年は、古代荘園絵図における水平・垂直方向の視点と回転から描かれる風景表現に関心を寄せ、地上に立つ身体の経験とは何かを探りながら絵画作品《Google Earth Topology Map / Notation of a fault》や《断層を記譜する》を制作しました。
クマ財団の活動支援を受けた2023年には、風景画から衛星地図、ドローンまで、「風景を獲得する」ための面やメディウムの変遷をたどり、そこに映り込む「画素」としての自身の表象を絵画や映像作品で捉えた《画素と屋根 pixel and roof》を発表。また同時期に、明治期に測量や地図記号集の製作に従事した画家・岩橋教章(1832-1883)の仕事をリサーチ。地図と絵画の交錯点に関心を寄せました。このことから水彩作品、地図記号集、ペン先調整のメモ用紙の3種類の模写を試みた作品を2024年に発表しています。
このように、3年間積み上げてきた地上に存在する身体への考察と実跡を集約する貴重な機会となりますので、ぜひご高覧いただけますと幸いです。

山縣瑠衣

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《Google Earth Topology Map / Notation of a fault》2022、《断層を記譜する》2022(撮影:原ちけい)

山縣 瑠衣 | Rui Yamagata プロフィール

1997年生まれ。2022年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。衛星画像に写る特定の地表の模様を収集する「地表の掻き傷」というシリーズをはじめとし、現在の風景表現や主体のあり方を皮膚の
レベルに及ばせながら考察、模索している。

山縣瑠衣 個展『風景記譜法』開催概要

会期2024年7月12日(金)から7月15日(月)まで
時間12:00 - 19:00
会場クマ財団ギャラリー
URLhttps://tinyurl.com/376dfscv