情報と選択の裏側にある「不採用の美学」 松山しげきが描く現代の可視化されない価値
アーティスト松山しげきによる個展「Algorithmic Discretion」が六本木にあるギャラリー兼飲食空間「アートかビーフンか白厨(パイチュウ)」で2025年4月22日から5月31日まで開催される。本展は松山が継続的に発表してきたシリーズ「Portrait of Dazzle」で不採用となったアイデアを基にした作品群で構成される。情報がアルゴリズムやSNSのバズによって選別され、可視化される現代において、「なぜ見えなかったか」をテーマに据えた試み。
「選ばれなかったアイデア」に価値を見出す試み
展覧会タイトルの「Algorithmic Discretion(アルゴリズミック・ディスクリション)」は、アーティスト自身が作品の制作過程で行った判断や選択が、いかにアルゴリズム的な条件に影響されていたかを再考する言葉である。松山は作品の採否が「視覚的要素」「コンセプト強度」「制作の実現性」などだけでなく、展示空間、コスト、SNSとの相性、観客の反応といった複雑な外部要因に左右されていたことを明かし、それらに意識的に向き合うために今回の展示を構成した。会場となる「アートかビーフンか白厨」は、雑居ビルの一角にあるアートギャラリー兼飲食空間。鑑賞と飲食が交差するユニークな空間にて、作品の新たな見え方も生まれるかもしれない。
松山しげき(Shigeki Matsuyama)プロフィール
1998年よりイラストレーターとして活動を開始。2011年以降はアーティストに転向し、絵画・彫刻・インスタレーションを中心としたコンセプチュアルな表現を展開。近年では「Portrait of Dazzle」シリーズを軸に、SNSやインターネットが人間の行動・感情に与える影響を主題とした作品を国内外で多数発表している。近年の主な展覧会として、2024年「Anonymous Heroes III」JPSギャラリー / 東京、2024年「Portrait of Dazzle」Quiet gallery HK / 香港、2024年「ART OF MIKU - Hatsune Miku × Contemporary Art -」パルコミュージアムトーキョー / 東京、2023年「これは人間ですか?」FOAM CONTEMPORARY / 東京、2022年「Portrait of Dazzle」GINZA SIX 銀座蔦屋書店 / 東京などがある。
アートかビーフンか白厨
「アートかビーフンか白厨」はThe Chain Museumが運営する飲食併設のアートギャラリー。月替わりで展覧会を開催するだけでなく、台湾料理と共にアート体験を楽しめる空間として注目されている。再開発により取り壊し予定の雑居ビルを活用し、都市の余白をアートの場へと転換する実験的な試みでもある。
「Algorithmic Discretion」開催概要
会期 | 2025年4月22日(火)から5月31日(土)まで |
会場 | アートかビーフンか白厨(パイチュウ) |
URL | https://tinyurl.com/3vy8vkhw |