記憶のレール

かつて強制送還列車が暗黒の出発を遂げた場所、フランス・リヨンの中心部ペラシュ駅付近に立つ魂と歴史に語りかける記念碑「記憶のレール」は、単なる記念碑を超えた力強く感動的な建築作品である。過去と未来を結ぶ橋であり、ホロコーストの被害者の記憶を具現化する場所であり、その記憶が決して消え去らないことを保証している。

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Photo credit: François Baudry

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Photo credit: François Baudry

ブライジング・ボルハルト・スタジオ(Blaising Borchardt Studio)によって考案された本プロジェクトは、20年に及ぶ闘いと忍耐の結晶である。「リヨンにホロコースト記念碑を建設する協会」や、元強制収容所収容者やアウシュヴィッツ生存者が活動会員や名誉会員らと協同して制作された。2023年、国際コンペティションで25カ国から寄せられた96件の提案の中から選出されました。1,173メートルの交錯する鋼鉄のレールは、リヨンとアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所を隔てる1,173キロメートルの悲劇的な物語を物語っている。

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Photo credit: François Baudry

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Photo credit: François Baudry

使用された素材からも言葉にできない悲劇を想起させるように設計されている。鉄道の要素であるレール、木製枕木、バラストが使用され、強制送還の恐怖を生々しく象徴している。訪問者は感じ、触り、記憶することができるよう、これらは過去のできごととの具体的なつながりを生み出ている。この記念碑はホロコーストの600万人のユダヤ人犠牲者のうち6,100人のローヌ=アルプ地域から強制移送された人々への追悼のみならず、未来の世代への教育ツールとしての役割も果たしている。ベンチに備えられたQRコードを読み込めば、協会とこの場所の目的に関する情報がわかる仕組みになっている。

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Photo credit: François Baudry

「記憶のレール」は過去を回想するだけでなく、忘れないという約束を体現している。集団的記憶の重要なランドマークとなり、歴史が生き生きと蘇る場所であり、レールの沈黙が言葉よりも雄弁に語る場所となっている。

ブライジング・ボルハルト・スタジオ(Blaising Borchardt Studio)

場所、記憶、人との独自の対話から生まれる建築とデザインを得意とするスタジオ。厳格な文脈分析と素材の創造的な探求に根ざし各サイトの潜在的な可能性を引き出すことを目指し、環境と深く結びついた、意外でありながら必然的な独自の建築的回答を提供している。あらゆるスケールとプログラムタイプに対応し、持続可能で意味のある建築を創造するという唯一の目標を追求している。