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MUSAEプロジェクトから誕生した共生型ハビタット構築実験

欧州連合が主導するS+T+ARTSプログラムの一環として進行する「MUSAEプロジェクト」において、Growing Futuresは次世代のデザイン思考を具現化する注目のプロジェクトとして採択された。本プロジェクトは、イタリア出身のデザイナー、ダニエラ・アマンドレセとスペイン・バスク地方の研究拠点「バスク・バイオデザイン・センター(Basque Biodesign Center)」との協働により展開されている。adf-web-magazine-growing-futures-1

Growing Futuresは菌糸体(マイセリウム)・ロボティクス・人間の三者が相互作用する「共生的デザイン」を通して、現地で自ら成長する適応型・生分解性ハビタットの構築を試みるものだ。従来の建築やプロダクト設計が採掘・加工を前提とした消費型モデルに依存しているのに対し、本プロジェクトでは、地域に存在する食品廃棄物を培地として利用し、現場で素材が育つプロセスを組み込む。これにより「素材を採取する」から「素材を育てる」へと発想を転換し、自然循環に沿ったデザインと生産の再定義を図っている。adf-web-magazine-growing-futures-2

adf-web-magazine-growing-futures-10adf-web-magazine-growing-futures-3菌糸体は単に建築素材やアート素材として扱われるのではなく、成長・適応・分解という能力を備えた「生きた存在=エージェント」として位置づけられている。その環境下でロボットは、温度・湿度・栄養状態などをリアルタイムで監視し、最適な成長条件を自律的に調整。人間はその全体構造を設計し、プロトタイプを通じて環境条件や社会文脈に応じたデザインの適応性を試行する。このように三者が協働しながら形成する構造は、単なるバイオマテリアル研究にとどまらず、社会や生態系との共創を可能にする包括的なシステムと言える。adf-web-magazine-growing-futures-5adf-web-magazine-growing-futures-4adf-web-magazine-growing-futures-6

本プロジェクトはMUSAEにおける四つの研究フェーズ(課題探索・インスピレーション・アイデア創出・コンセプト開発)を経て、12段階にわたるプロトタイピングへと進んだ。菌糸体の自由成長/鋳型成形/栄養分分配を担うロボットの実験、さらには全エコシステムを統合する環境まで、異なるシナリオを構築しながら反復的にテストを実施。その結果、単一素材や単一機能にとどまらない多層的かつ持続可能な建築プロトタイプが誕生した。adf-web-magazine-growing-futures-7adf-web-magazine-growing-futures-8adf-web-magazine-growing-futures-9

Growing Futuresは「自然とともに設計する」という従来のアプローチを超え、「自然と共に設計される」環境へとデザインの視点を拡張する。素材は静的なリソースではなく、成長と変容を続ける生体として扱われ、設計者はもはや作者ではなく「プロセスの促進者」として機能する。この新しい視点は、自然の知性を尊重しながら、ものづくりを単なる生産行為ではなく、他の生き物との協働行為へと転換するものである。このような共生的・再生的アプローチは、プロダクトデザインから建築、そして将来的には都市環境にまで拡張可能であり、Growing Futuresは環境修復と未来志向の共創モデルとして、現在のデザインパラダイムに一石を投じている。