環境アーティスト、スティーブ・メッサムによる「空気の彫刻」がオランダの歴史的街並をジャック
2022年9月24日から10月13日まで、オランダ行政の中心地であるハーグにて「Blow Up Art Den Haag(ブロー・アップ・アート・デン・ハーグ)」が開催されている。国際的なアーティストを招待し、5つのサイトスペシフィックな期間限定のインフレータブルアートを街中に展示。訪れた人々が街を散策しながら、歴史的建造物と現代アートのコラボレーションを楽しめる3週間となっている。

Tunnel - an installation by Steve Messam through the Gevangenpoort in The Hague, Netherlands. Photo credit: Pim Top / Hague & Partners
参加したアーティストは、スティーブ・メッサム、マーリーン・スリーウィッツ、アドリアヌス・クンデルト、そしてラリッサ・アンバヒトシーア。イギリスの環境アーティスト、スティーブ・メッサムは、ハーグの街で特に歴史的な意味を持つ場所に、2つの作品を展示した。
「Oranje」
ウィレム1世(オレンジ公)像×スティーブ・メッサム
ハーグ中心部、国会議事堂のすぐ隣にある広場に佇むウィレム1世像が、角を生やしたインフレータブルアートをまとっている。自由を象徴するオランダ独立国家の初代君主ウィレム1世の像に、現実離れした緑のトゲトゲが舞い降り、まるで自由の女神の王冠のようにも見える。遊び心のあるスティーブ・メッサムのアプローチは、歴史と名誉で固められた彫刻に、カラフルでポップなタッチを加えている。

Oranje - an installation around the statue of William I in the Hague,
Photo credit: Pim Top / Hague & Partners
「Tunnel」
デ・ゲヴァンゲンポールト(刑務所の門)×スティーブ・メッサム
ゲヴァンゲンポールトは、ビネンホフ(ハーグ中心部にある国会議事堂)に通じる主要な門であり、中世には判決を待つ重大な罪を犯した人々を収容するために使用された、最も悪名高い刑務所だった。1920年、路面電車を走らせ交通量を増やすために道幅が広げられ、門の片側が撤去された。作品「Tunnel」は、アーチの中をアートが通り抜ける様から、建物の門としての役割を再現している。空気圧で作られたアーチの中を通ることで、空間に個性が宿り、人々に親近感を与える。通路の出入り口の球根のような有機的な形状が、溢れ出る生命力を表現し、建物の幾何学的な形状との間に奇妙なコントラストを生んでいる。一方で、緑色の風船が屋根の緑青に呼応し、広場の空間に溶け込んでいる。

Tunnel - an installation in the 15th Cenntury Gevangenpoort, The Hague. Photo credit: Pim Top / Hague & Partners
スティーブ・メッサムについて
スティーブ・メッサムは、英国ダーラム州を拠点に活動する環境アーティスト。期間限定のサイトスペシフィックなインスタレーションで歴史的空間や空虚な建築に介入し、我々を取り巻く環境や日常と新しく向き合う方法を提起する。主に「家より大きい」スケールで作品を制作し、空間の色やスケールに働きかける。スコットランドの城跡やブラックプールのシェルターを包んだ一連のインフレータブル作品が有名である。
2006年の上海ビエンナーレでは初のオフサイトインスタレーションを作成し、2009年のヴェネツィアビエンナーレでは、ベネチアラグーンに多くのサイトスペシフィックなインスタレーションを作成。2021年、ニューカッスル・ジャーナル・カルチャー・アワードで「ビジュアル・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞。