世界の都市を舞台に滞在制作を行った、国内外のクリエーターたちによる成果発表展

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、2006年よりレジデンス・プログラム「クリエーター・イン・レジデンス」を開始し、東京や海外の派遣先を舞台に、ヴィジュアル・アート、デザイン、キュレーションなど様々な分野で活動するクリエーターたちへ滞在制作の機会を提供している。「デイジーチェーン」展では、2019年度にTOKASから海外各地の提携機関へ派遣されたクリエーターと、TOKASレジデンシーに招聘された計15名のクリエーターによる滞在制作の成果を2020年7月4日(土)から発表する。

adf-web-magazine-tokas-2020

レジデンスで滞在制作を行うアーティストは、その土地の記憶や社会的構造に接続することによって、固定された視点を問い直す。小さな声や見過ごされてきた事実に光を当てるアーティストの作品は、過去や遠く離れた国の出来事に留まらず、今ここにいる我々に繋がる問題意識を内包した世界の見方を刷新する試みでもある。ヒナギクの花冠を意味する「デイジーチェーン」は、コンピュータと複数の機器を繋ぐ接続方法の一つ。太陽の目(day’s eye)を語源とするヒナギクの花は、点と点を結ぶように個々を順番に繋ぎ、一つのネットワークを構築する。本展では、世界各地のレジデンスで活動を行った15名のアーティストが、リサーチをもとに考察を深め発展させた成果作品を紹介する。時間と空間に接続することによって、新しい視点を獲得し、現在の社会を多様に映し出す作品を楽しめる内容となっている。

「デイジーチェーン」展 第1期:2020年7月4日(土)~8月10日(月・祝)

参加アーティスト
井原宏蕗|IHARA Koro

生き物の副産物と彫刻や工芸の技法を掛け合わせて制作している井原は、生態系の循環に不可欠なミミズに着目し、ドイツ各地で糞塚の採取と土のリサーチを実施。本展では、滞在中に発表した生の糞塚(有機物)と焼成した糞塚(無機物)を対比させるインスタレーションを再構成する。

adf-web-magazine-tokas-2020-1

プロフィール
1988年大阪府生まれ。東京都を拠点に活動。2013年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。主な展覧会に「TRASMUTAZIONI」(Galleria d’arte FABER、ローマ、2018)。受賞歴に「TOKYO MIDTOWN AWARD 2019 グランプリ」、「第20回岡本太郎現代芸術賞『岡本敏子賞』」(2017)など。

キム・ジヒ|KIM Jihee

身体を「不完全なユートピア」と定義し制作に取り組むキムは、身体的なエネルギーによって像を写すシルクスクリーンの印刷工程に関心を持ち、その行為を広義のドローイングとしてアプローチした大型作品を発表する。

adf-web-magazine-tokas-2020-2

プロフィール
1983年ソウル生まれ。ソウルを拠点に活動。2020年梨花女子大学校大学院造形芸術学部博士課程修了。主な展覧会に「Your Hands Are Mine」(All That Curating、ソ ウル、2020)、「Uncanny Skin」(Gallery SoSo、パジュ、韓国、2019)。 

衣 真一郎|KOROMO Shinichiro

日常の風景や身体的な記憶を基に制作する衣は、カナダの風景とその自然の中で生まれた競技であるアイスホッケーについてリサーチを行った。滞在中に知った20世紀初頭の画家たちの技法を参照し、新たに取り組んだ木板を支持体とする油彩など、絵画作品を中心に展示する。

adf-web-magazine-tokas-2020-3

プロフィール
1987年群馬県生まれ。群馬県を拠点に活動。2016年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。主な展覧会に「project N 75 衣真一郎 KOROMO Shinichiro」(東京オペラシティアートギャラリー、2019)、「TWS-Emerging 2014 『風景と静物』」(TWS 渋谷、東京、2014)。

北條知子|HOJO Tomoko

1901年にベルリンで行われた世界初の日本人女性―川上貞奴の歌声の録音に焦点を当て、幾度となく言及される彼女の身体的・視覚的な美と、「単なる音」として受容された彼女の声や沈黙を対比させながら、海外において「日本人女性」がどのように扱われてきたのかを考察する。

adf-web-magazine-tokas-2020-4

プロフィール
1988年愛知県生まれ。東京都を拠点に活動。2016年ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション修了。主な展覧会に「TOKAS-Emerging 2019『声をひそめて』」(TOKAS本郷、東京、2019)、「群馬青年ビエンナーレ2019」(群馬県立近代美術館)。 

リ・カイチョン(李 继忠)|LEE Kai-Chung

第二次世界大戦中、日本占領下の香港と広州で行われた生物・化学兵器の人体実験を調査し、映像、写真、パフォーマンス、彫刻など5つの作品からなるプロジェクト≪深海への細道≫を発表。戦争の歴史を起点に、人間の遷移する概念を探求する。

adf-web-magazine-tokas-2020-15

プロフィール
1985年香港生まれ。香港を拠点に活動。2014年香港城市大学修士課程クリエイティブ・メディア専攻修了。主な展覧会に「Courses of Action」(ゲーテ・インスティトゥート香港、 2019)。受賞歴に「第 12 回上海ビエンナーレ」(2018)。Hong Kong Arts Development Award ヤングアーティスト賞(2018)。

1 2