ポーラ・ヘイズ氏インタビュー
夏は多くのニューヨーカーにとってアートへの関心があるないに関わらず屋外アートを楽しむ季節である。ニューヨークでは毎年恒例で市民に対して無料で演劇、映画、コンサートを自然あふれる公園で鑑賞できるプログラムが提供されているのだ。
ビルが立ち並ぶ街だからこそ、人々は自然を愛し自然と共に生きることを大切にしているのかもしれない。
ただし、これらのアクティビティの課題は室内のような快適さはないこと。鮮やかな緑を眺めながらエアコンの効いた快適な部屋で夏を過ごすことほど素晴らしい時間の過ごし方はないという人もいるだろう。
今回、私はテラリウム*を自然と立体彫刻を合体させたファインアートとして発展させたアーティスト、ポーラ・ヘイズ(Paula Hayes)氏をインタビューした。
彼女はアメリカ出身のビジュアルアーティスト・デザイナーとして、彫刻、絵画、インスタレーションアート、園芸、景観デザインなど幅広く活動している。作品の主要テーマは人間と自然の調和。どの作品もその中に生き続ける生命体の世話をすることを必要とするためポーラ氏のみならず作品を展示する側の努力により、鑑賞する人がその美しさをフルに体験することができることも特徴である。
Q: 昨今の作品制作とそのコンセプトを教えていただけますか?
ポーラ・ヘイズ: 今は自然を直接感じられるよう、ほとんどの時間を自然とともに過ごすことにしています。そうすることで、自然からのメッセージを五感を使って感じられるのです。私は生命体であり、人間でもあります。都市の中で生活していると簡単に忘れてしまうこの感覚を忘れたくないと思い、この生活を実践しています。また、私は作品制作においてデジタルツールを使うこともしていません。彫刻は全て自分の手を使って制作しています。ただし、Garden Storiesという、ポエムシリーズおいてはレコーディングとフィルミングをデジタルツールを使って作成しています。
Q: テラリアムを自身の作品の主要なテーマに選んだのはどんなことがきっかけだったのでしょうか?
ポーラ・ヘイズ:私はアーティストとして何か有形物に、私がそれまで作っていた儚い命のアッセンブラーと園芸の要素を取り入れた立体彫刻アッセンブラーを合体させ、投影する方法を探していました。そしてある時、「耐久力があり、透明である」という特徴を兼ね備えた「手吹きガラス」を乗り物(船)と見立て、作品に使用することを思いつきました。手吹きガラスという素材・製造方法は古典的でありとても現代的、そして工業的でありながら芸術的であることに気が付いたのです。この気づきこそ、私が実現・表現したい世界をこの「船」の中に組み立てることを可能にしテラリアムを自分自身の主要なテーマとすることのきっかけになりました。
Q: これまでに大小のテラリアムのみならず、同じコンセプトを取り入れた大規模な景観デザインも手がけられていますが、これらのプロジェクトを手がける際に大変なことはどんなことでしょうか?
ポール・ヘイズ: 唯一難しいことといえば、アート作品の制作方法を含めた実現したい世界を全て実践できる機会に巡り会うことかと思います。
エコシステムとの調和を第一に考え、既存の複雑な生態系を破壊してしまうことなく、ありのままの自然を再現したガーデンを作ることこそ、私が実現したい世界であり私が心から美しいと思えるアートなのです。
Q.: 今後アーティストとして向かってく方向、目標としていることがあれば教えてください。
ポール・ヘイズ: 私は世界を救いたいと思っています。ここで言う「世界を救う」という意味は、一つ一つの行動に対して責任をもち、誠実であることです。これは私がガーデニングをしていても、彫刻作品を作っていてもどんな時でも同じことです。このような心がけが、私のアーティストとしての特徴でもあり、方向性でもあるのです。
* テラリウム (Terrarium) とは陸上の生物(主に植物や小動物)をガラス容器などで飼育・栽培する技術である。