「第72回 正倉院展」正倉院宝物の多彩な世界を展示
奈良国立博物館は、第72回目となる「正倉院展」を2020年10月24日(土)から2020年11月09日(月)まで開催する。本展では、薬物と武器・武具が出陳されるほか、花氈(かせん)、帯、刀子、鏡、献物用の箱や台、遊戯具、楽器、伎楽面、衣装、文書、経巻などが出陳され、東大寺の倉庫である正倉院宝物の多彩な世界を鑑賞できる。
聖武天皇の七七忌(四十九日)である756年6月21日、后の光明皇后は東大寺大仏に60種類の薬物を献納した。目的の一つは病人に分け与えることにあり、実際に使用され、現在は38種を残している。皇后は今日の病院や福祉施設に通じる施薬院や悲田院を創設したが、薬物献納も皇后による一連の救済事業に位置付けられる。本展では皇后が献納した薬物から6種が展示されるほか、由緒は不明の宝庫に伝わる薬物2種が出陳される。
薬物が献納されたのと同じ日に、光明皇后は聖武天皇の遺愛品600数十件を献納。そのうちの6割以上に当たる400件を占めていたのが武器や武具。その多くは764年9月の恵美押勝の乱を平定するために宝庫から出され、戻ることはなかった。本展では御甲残欠(おんよろいのざんけつ)、漆葛胡禄(うるしかずらのころく)、金銅鈿荘大刀(こんどうでんかざりのたち)、梓弓、鞆、鉾、馬鞍が出陳される。
また、毛氈(もうせん)、刺繡、纐纈染め(こうけちぞめ)などの染織技法、珠玉飾り、螺鈿、平脱、撥鏤(ばちる)など種々の工芸技法を用いた宝物が出陳される。近年の宝物特別調査によって、花氈と色氈の材料や製法について新たな発見があり、本展では文様を表した花氈が2床、単色の色氈が1床出陳される。また、刺繡を用いた品には紫皮裁文珠玉飾刺繡羅帯残欠(むらさきがわさいもんしゅぎょくかざりししゅうらのおびざんけつ)、孔雀文刺繡幡(くじゃくもんししゅうのばん)、花鳥文刺繡幡残片(かちょうもんししゅうのばんざんぺん)があり、纐纈染めが用いられた宝物には縹纐纈布袍(はなだこうけちのぬののほう)と纐纈布袍(こうけちのぬののほう)が出陳される。
このほかに絵画としての魅力を有した宝物も多く、撥受けに鳥などを描いた紫檀槽琵琶、金と銀で花鳥などを描いた紫檀金銀泥絵琵琶撥、曲芸や楽器を演奏する人物などを細かく墨で描写した墨絵弾弓が出陳。さらに、文書には戸籍や税に関する公的な文書、写経所における事務文書などが出陳され、奈良時代の社会や暮らしを垣間見ることができる。
奈良国立博物館「第72回 正倉院展」概要
会期 | 2020年10月24日(土)〜2020年11月09日(月) |
会場 | 奈良国立博物館 東新館・西新館 |
住所 | 奈良県奈良市登大路町50番地 |
時間 | 09:00〜18:00 ※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(11月3日)は20:00まで ※入館は閉館の60分前まで |
休館日 | 会期中無休 |
観覧料 | 一般2,000円、中・高・大1,500円 |