彫刻のような木のキューブがランドスケープに溶け込むシンプルな住居

スイスの建築デザイン事務所Appels Architektenが設計した森の湖畔のそばに佇む木の家は、そこに住まう家族が季節や日の移ろいを感じながら送る日常を、シンプルな建築の姿に表現している。プライベートな部屋と共有スペースを区別することを重視したことにより、木製の立方体の個室を組み合わせた彫刻のような芸術的な構造体が完成した。立方体と立方体の間にある共有スペースは、水平方向にも垂直方向にも展開されている。その結果、冬でも家の奥まで光が届き、屋内のどの位置からも庭や木々の梢、そして湖の向こう側までも見渡すことができる。

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Hidden on a plateau above the lake, nested inbetween old trees.
Photo credit: © Florian Holzherr

立方体による個室とオープンなゾーニングによる独特の空間構成により、隠れ家的な要素とコミュニティ的な要素が共存した生活が可能となる。住人が、共同生活に参加したり、ときにはプライベートな空間にこもったり、と思いのままに空間を行き来することができる。また、ゆとりのある天井高と豊富な日射量、そして飾らない素材を使うことで、心地よい雰囲気と快適な室内空間が実現している。

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Photo credit: © Florian Holzherr

扇状に広がる屋根の形は、傾斜した地形を逆手に取り、変化に富んだ遊び心のあるインテリアに活かされている。プライベート空間が木製のスラットで覆われ、共有空間がガラス張りとなっているファサードの変化は、空間彫刻にリズミカルな動きをプラスする。キューブを覆う木製のスラットは半透過となっており、プライバシーを確保しながらも、外との繋がりも保っている。スラットの一部は折り畳みシャッターとなっており、これを開けると、中と外を繋ぐ新たな視界が開ける。1階の大きな窓は、ウォールポケットに完全に収まる構造。同様に、キッチンも外に向かってフルオープンにすることができる。

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Facade with play of open and closed parts and hidden windows becoming visible in the dusk. Photo credit: © Florian Holzherr

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The characteristic shape of the roof, faning out towards the lake. Photo credit: © Florian Holzherr

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The kitchen opens entirely to the outside with sliding doors disappearing inside the walls. Photo credit: © Florian Holzherr

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Private rooms are hidden behind translucent shades.... Photo credit: © Florian Holzherr

再生可能な資源である木材を使用することで、再生できない一次エネルギーの割合と建設時のCO2排出量の両方を削減することができる。また、木造建築は、炭素貯蔵庫としての利点に加え、従来の無垢建築に比べ、現場での高度なプレハブ化が可能なため、組み立て時間の短縮や建設現場への移動回数の減少が期待できる。

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A huge room in the basement acts as minature sports hall for flexible uses. Photo credit: © Florian Holzherr

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A skylight allows light to fall into the shower... Photo credit: © Florian Holzherr

強固で耐久性のある素材を選択することは、ライフサイクルの延長にも繋がる。その結果、建物の構成要素を分離することで修理が容易になり、使用済みの建物構成要素を最大限に再利用・リサイクルするための材料分離を伴う解体が可能となる。

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An intimate garden borders the back of the house. Photo credit: © Florian Holzherr

Appels Architectureについて

カスパーとニコラスの兄弟は、建築と不動産の分野における一般的な慣習に挑戦することを目標に、学際的な建築事務所としてAppels Architectsを設立。気候変動に対応しながら、エシカルでソーシャルな志を持って、建築主導の開発に取り組んでいる。シンプルで頑丈な建築に変換する専門チームとともに、小規模から中規模の不動産プロジェクト開発を手掛けている。