デザインでヒューマンスケールを取り戻す

オランダ・アムステルダムのビジネス街にある複合オフィス施設「トリポリス・パーク」を、デザイン事務所コンクリート・アムステルダムがダイナミックなアトリウム・デザインで再生した。設計はMVRDVアーキテクツ。この施設には、建築家アルド・ファン・エイクの晩年の傑作のひとつである記念碑的な複合コンプレックス「トリポリス」と、MVRDVによるヴァン・エイクのビルをまたぐ巨大なランドスクレイパーがある。

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

コンクリート・アムステルダムは、アトリウムの内部とメインの象徴的なエレベーター乗り場をデザインし、7階建ての高さの空間にヒューマンスケールを採り入れ、ファン・エイクの建築言語はそのままに、新旧の対照的な共生を楽しむことを目指した。アトリウムは、広々としたガラスのファサードとモジュール式のエレメントが特徴で、機能的な環境を提供しながら、自然光を採り入れる開放的なスペースとなっている。このデザインは、ファン・エイクのトリポリス・コンプレックスの建築要素に敬意を表し、都市と自然の美学を融合させ、ユニークで活気ある雰囲気を演出している。

中間スペースとしてのアトリウム

アトリウムは、ファン・エイクの角ばった遊び心のある建築と、MVRDVが新たに建設したランドスクレイパーの7階建てのガラスのファサードの間に位置し、「中間的な空間」として機能している。ランドスクレイパーとファン・エイクのビルにあるオフィスが同じように利用できる公共ロビー空間という位置づけだった。

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

コンクリート・アムステルダムがデザインをする上での主な課題は、建築の硬質な素材に支配されたこの広大でそびえ立つ空間に、人間のスケールを取り戻すことだった。

コンクリートは、公共ロビーのために木造の景観をデザインすることで、この課題を利点に変えた。ファサードの全長にわたって伸びるこの空間は、居住、仕事、待機、出会いの場を提供する。この大きな木製の景観は、周囲の建築物によって形作られている。一方では、ファン・エイクの建物の遊び心のある幾何学的な形状を映し出し、相補的なオフセットを作り出している。もう一方では、ガラス張りのファサードのすぐ外側にある高速道路の斜面に沿っている。その結果、木造のブロックの中に魅力的な高さの変化が生まれ、ダイナミックなスペースへと変貌を遂げた。

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

また、利用者の様々なニーズに応えるため、木製のブロックから多様な座席構成を慎重に削り出した。ガラスのファサードに面した下部の奥まった席から、ブロックに埋め込まれた円形の共同テーブルを囲むベンチ、アトリウム全体を見渡せる景観の最も高い場所にあるトリビューン席まで、様々な席がある。活気ある形と親密な席の配置と並んで、ヒューマンスケールをさらに強調し、アトリウムの巨大な高さを打ち破るために、ランドスケープに4本の大木を植えた。遠くから見ると、木製の景観の壮大なジェスチャーが印象的だが、その景観に近づくと、木工細工、石の象嵌、布張りなど、入念にデザインされたディテールが広がる。アトリウムの両端には、プライバシーを求める人のための非常に奥まったワークスペースを作った。

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

鏡張りの立面の効能

角ばった中央のエレベーターロビーは、アトリウムの温かみのある木製の景観と有機的な形状とのコントラストをなしている。エレベーターロビーは広いが天井は比較的低い環境に対し、壁と天井に角度のついた鏡を並べ、反射するイメージによって2倍の高さがあるように錯覚させる工夫をした。壁面の角度のある鏡は、エレベーターの利用者が互いに見やすく、関わりやすいように戦略的に配置され、アナログなコミュニケーションを刺激するものとなった。

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Tripolis Park Atrium by Concrete Amsterdam
Photo credit: Wouter van der Sar

コンクリート・アムステルダム

インテリアと建築の複合スタジオ。1997年以来、従来の枠を超えた革新的なコンセプトを展開している。建築、インテリアデザイン、アーバンデザイン、ブランディング、コンセプチュアルなプログラミングなど、多様な才能が融合し、ユニークでインパクトのあるソリューションを生み出している。