心と体、そして心のためのソーシャル・アーキテクチャー

モントリオールを拠点とし、持続的な社会的インパクトをもたらす体験型建築を手がけるACDF建築事務所が、1869年創立の大学「コレージュ・ノートルダム」のキャンパス中心部に新たな社会的拠点となるスポーツと文化の複合施設(Complexe Sportif et Culturel Collège Notre-Dame)を完成させた。

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Photo credit: Adrien Williams

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コレージュ・ノートルダムは、学生が社会に積極的に貢献できるよう、心・技・体の充分なバランスを求める教育を提唱しているが、ここ数十年の学生数の大幅な増加により手狭になっていた。そこでACDF建築事務所にすべての学生の日常生活に良い影響を与える新しい複合スポーツセンターの設計を依頼。学生集団をひとつにまとめるため、新しい複合施設はキャンパスの中心でレガシーな教育施設と屋外スポーツ施設を結ぶ、学生生活をつなぐすべての歩行者通路の交差点に配置されることになった。本施設は厳粛な雰囲気に包まれているが外周部全体が窓になっており、内部と外部に視覚的な関係が生まれ活気が生まれている。

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遺産第一

コレージュ・ノートルダムは、モン=ロワイヤル公園、墓地、施設、住宅地、島内最大級の緑地からなる保護地域であるモントリオールのモン=ロワイヤル遺産地区の一部を構成している。この環境によりACDFは思慮深い設計哲学を反映させ、遺産を設計の中心に据えた。広大なキャンパスには、1880年代に建設された初期の建物や、1929年に完成した拡張工事など、様々な時代のイギリスやフランスに影響を受けた建築様式を反映した遺産的建物がある。1960年代には再び大規模な増築が行われ、キャンパスにモダニズム建築の言語が吹き込まれた。驚くべきことに、折衷的な建築様式は、調和のとれた一連の建物として発展してきた。ACDFは、現代的な建築コンセプトの構造の中で、その遺産を継承することに努めた。

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キャンパスライフに窓を開く

ACDFは、巨大な長方形の建物のデザインに水平的な言語を適用した。上層階は、無煙炭色のアルミパネルで覆われた不透明なファサードが特徴的で、そのコーナーには施設の機械システムが隠されている。長方形の上層階は下層階の境界を越えて突出しており、直射日光や風雨を防ぐと同時に、建物内に豊富な自然光を採り入れることを可能にしている。

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下層階はカーテンウォールの全面ガラス張りのファサードで、歩行者フロアから新施設の内部を直接見渡すことができる。丸みを帯びたコーナーが、全面ガラス張りの下層階を楕円形にし、建物内の回遊性を高めている。複合施設のメインエントランスの真上では、上層階のアルミパネルが濃い色調のガラスにシームレスに溶け込み、ダンス、即興、演劇、フェンシングなど、複合施設の多機能ルームで繰り広げられるアクティビティを際立たせている。

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巨大構造物のシームレスな統合

中庭に建設された本施設は、キャンパスの主要な建物から中庭を横切りフットボール場へと下る下り勾配にあり、この難しい地形を利用して敷地を掘削し建物の半分は地下に建設された。コスト効率に優れるだけでなく建物の外壁を最小限に抑えることで、巨大な新複合施設をより人間的なスケールにし、威圧感を和らげることができている。

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また、凹凸のある地形は、全面ガラス張りのファサードの真下に建物の最下層に沿って自然石の壁を建てる好機にもなった。自然石を選択することで、周囲の歴史的建造物の建築様式やパレットに敬意を表しながら、新しい複合施設をキャンパスの中心的かつ統一的な要素としてさらに一体化させている。広大な緑の屋根は、カレッジのすべての教室や学習ホールから高い視認性を確保しながら、そのすべてを覆っている。

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誇りの源

本施設はコンテンポラリーなデザインと素材感を注入し既存の建物と調和させて広大なキャンパスを一体化させ、この教育機関の輝かしい歴史に21世紀の章を加えた。それだけではなく、今後何年にもわたって学生たちの日常生活にプラスの影響を与えると思われ、コレージュ・ノートルダムの貢献の社会的側面が期待されている。

ACDF建築事務所

野心的でデザインに精通した商業、住宅、ホスピタリティ、インテリア、マスタープランなどのプロジェクトを手がけるACDFは、カナダで最も先進的な建築事務所のひとつとして知られている。マキシム=アレクシス・フラピエ、ジョーン・ルノー、エティエンヌ・ラプラン・クルシュヌの指揮のもと、大規模プロジェクトにおける調和のとれたデザインは、有意義でインパクトのある新世代の建築物への先進的なアプローチが評価され、数々の賞を受賞している。