デザイン理念はサステナビリティとクオリティオブライフ
オランダ北西部の商工業都市フローニンゲンの郊外に開発中の地域Meerstad。今後、急速な成長が見込まれるこの地の交流を司る場所として建設されたのが、SuperHubと名付けられた多目的施設である。不動産ディベロッパーのMWPOの依頼を受けてデザインを手掛けたのは、フローニンゲンにオフィスを構える地元の建築デザイン事務所De Zwarte Hond。本施設は、2022年11月2日にオープンした。
緑の街の中心に
フローニンゲンの開発地Meerstadは、緑に溢れた開けた土地や観光地として有名なウォルドメール湖などがあり、自然豊かな土地として知られている。この地には今後10年の間に5,000戸の住居が建設予定であり、活気あふれる街へと変貌を遂げることが予想されている。成長とともに増える人口を見越して、住人が買い物や食事をし、集まったりできるシンボリックな交流の場を設けることが、本プロジェクトの目的である。SuperHubは街の交流の中心的役割を担う場所であり、ひと際目を引くそのデザインは、この地に根付いているサステナビリティとクオリティオブライフの理念をデザインの中心に据えている。
モダンなマーケットホール
SuperHubは、昔ながらの市場(マーケットホール)を、より循環性の高い形で再現している。拡張性があり、全方位をガラスで覆われた透過性の高い建物は、積層木材が交差する構造で、その外観は大聖堂のような趣がある。広い開口と9mの天井高は屋内に充分な光をもたらし、レイアウトや将来的に変化する用途の幅を広げている。5m以上突き出している天蓋は、日よけになると同時に、エレガントな柱や網のように広がる木のトラスによって周囲の景観に溶け込む働きもしている。また、入念に計算され精巧に組み立てられたクロス構造のお陰で、風避けの構造を追加する必要がなく、シンプルな造りになっている。主に木材を使用したことは、環境への負荷を軽減し、クライメートポジティブな建築に貢献している。
エコロジカル&サステナブル
SuperHubは、マーケットプレイスとショッピングセンターが融合した場所であり、訪れた人々が買い物とグルメを同時に楽しめる現代的な施設である。構造は、将来的な増築や改造を予測して作られており、柔軟性のあるオープンなレイアウトは、コミュニティの要求に応じてその形を変えることが可能だ。この先何十年も、寂れたり廃れることはなく、いつまでもコミュニティの中心として存在することができる。例えば、これから20年の間に、コミュニティセンター、美術館、そして住居と用途を変えることができ、まさにコミュニティと共に成長することができるサステナブルな建物なのである。
SuperHubの屋根には、ソーラーパネルや植物を設置することができる。また、ビルトインの空調設備や地下の蓄熱設備により、屋内の快適な温度を省エネルギーで維持することができる。さらに、地面の振動を吸収する耐震構造も兼ね備えている。これらの充実した設備により、あらゆる用途に対応することができるため、地域の様々な活動の場としての利用が可能となるのである。
ソーシャルサステナビリティのために
SuperHubは、現在スーパーマーケットとカフェ、ヘルスセンターを含む様々なサービスを住人に提供している。建物内の開けた広いスペースは、人々が集う場所として利用されている。宅配サービスが充実し、買い物するという行為が至ってシンプルになりつつある昨今、「買い物」だけをするショッピングセンターには何の魅力もない。人々が足を運んで長い時間滞在したいと思える場所とは、日々の買い出しをするだけでなく、特別な空間で買い物を楽しみ、人と会って交流ができる場所なのである。SuperHubは、Meerstadのソーシャルサステナビリティ向上のための場所として、今後も地域と共に成長していく。
De Zwarte Hondについて
De Zwarte Hondは、主に建築、都市デザイン、デザイン戦略などを手掛けるデザイン会社。オランダのフローニンゲンの他に、ロッテルダムとドイツのケルンにも事務所を構える。高い社会性と技術力を兼ねそなえ、コンテクストを尊重しながらユーザーニーズに応えるプロジェクトで、ユーザーのヴィジョンを実現している。