「生きること」と「描くこと」が切り開く世界

水戸芸術館現代美術ギャラリーで「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」展が2025年2月15日(土)から 5月6日(火・振休)まで開催される。近藤は躍動感溢れる筆遣いと力強い色彩の絵画で知られ、日常の事物や記憶に残る人々の面影、植物、幼子の言葉といったプライベートなモチーフから生と死や超越的な自然の力といったテーマまでを自身のなかに受け止め、それらを描くことで異なる者同士が「いま・ここ」につながり合う世界を展望してきた。本展では、生命の祝福、他者と共に在ること、2022年以降ますます切実さを帯びる災害や戦禍にある人々への想い、葛藤とレジリエンスなど、近藤亜樹の作品をとおして「生きること」と「描くこと」が切り開く世界に迫る。

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近藤亜樹《ザ・オーケストラ》2024年 ©The artist. Courtesy of ShugoArts. 撮影:武藤滋生

展覧会のみどころ

4年振り、過去最大規模の個展

2022年以降の作品と、今展に向けて制作された50点を越える新作を一挙に展示。生への肯定や他者と共に在ること、人間的な尺度を越えた自然の世界、植物とのささやかな交感、芸術の根源に対する問いなどをテーマに、絵画表現の可能性を切り開く近藤の現在を、建築家・青木淳による展示構成によって展覧する。

幅9メートル超の新作絵画《ザ・オーケストラ》

喜びや悲しみ、葛藤や回復の過程を昇華させ、見る者と一体になる絵画を体験する本展のみどころの一つとなる9メートル超の新作絵画《ザ・オーケストラ》は、喜びや悲しみ、困難の受容と再起への希望とが芸術として昇華され、個々の表現が一体となる瞬間を描いた躍動感溢れる大作。人間のみならず動物や植物、昆虫や擬人化された音の粒が混然となって画面を埋め尽くす様には愉快さやユーモアがあり、また画面から溢れんばかりの色彩と筆致には、イメージを逃すまいとする表現への貪欲さを感じさせる。

いろいろな姿や顔の「サボテン」に出会う 

本展に向けて近藤が注力するのがサボテンをモチーフにした新作シリーズ。ユニークなかたちや特徴をもつ、近藤の大小の「サボテン」は、生命力のシェルターとも、あるいは自己・他者を慈しむ気持ち(コンパッション)の象徴とも見ることができる。本展では、展示設計の青木淳、そして「いい顔してる植物」をコンセプトに活動する「」とのコラボレーションで、様々な「サボテン」に出会うインスタレーションが展開される。

「描くこと」と「生きること」が切り開く世界 

初期代表作《山の神様》(2012年)をはじめ大型絵画で発揮されてきたダイナミックな画面構成や、身近な事物から超自然的な世界までを行き来する自由な発想とそれを描き留める画力、見る者の内面を見つめ返すようなポートレイトなど、近藤の作品にはいずれも、絵に対峙する者の感受性を掻き立てる力がある。その表現は生きることそのものへの祝福となって人々の心を震わせてきた。本展では、活動初期から近藤が問い続ける「生きること」と「描くこと」のつながりについて、その近年の作品から改めて見つめ直す。

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《ラブコール》2024年 ©The artist. Courtesy of ShugoArts. 撮影:武藤滋生

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《Morning Dew》2024年 ©The artist. Courtesy of ShugoArts. 撮影:武藤滋生

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《Planets》2022年 個人蔵 撮影:武藤滋生. ©The artist. Courtesy of ShugoArts.

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《ともだちになるためにぼくらはここにいるんだよ》2022年 森美術館蔵 ©The artist. 撮影:武藤滋生

近藤亜樹

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Courtesy of ShugoArts. Photo by Kohei Shikama

1987年北海道生まれ。2012年サンフランシスコ・アジア美術館での企画展「PHANTOMS OF ASIA: Contemporary Awakens the Past」に10メートルを超える大作絵画《山の神様》を出展。以後、描くことで現実に向き合う自らの創作を探求し、2015年には約14,000枚の油彩と実写を組み合わせた鎮魂の映画《HIKARI》を発表するなど、絵画表現の可能性を拡げてきた。2020年から山形県を拠点に活動している。主な展覧会に「わたしはあなたに会いたかった」(個展、シュウゴアーツ、 2023 年)、国際芸術祭「あいち2022」(2022年)、「星、光る」(個展、山形美術館、2021年)、「高松市美術館コレクション+身体とムービング」(高松市美術館、2020年)、「絵画の現在」(府中市美術館、2018年) など。受賞歴に2022年VOCA 奨励賞、2023年絹谷幸二芸術賞などがある。

「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」開催概要

会期2025年2月15日(土)~ 5月6日(火・振休)
時間10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日月曜日、2月25日(火) ※2月24 日(月・振休)、5月5日(月・祝)は開館
料金一般900円、高校生以下/70歳以上は無料
URLhttps://tinyurl.com/4mra4tac