タンザニア農村地域で健康と建築が融合した住宅プロジェクト

「Star Homes(スター・ホームズ)」プロジェクトが、ミラノデザインウィーク2025にてLABÒ Cultural Projectの招待により展示された。本プロジェクトではタンザニア南部ムトワラ州の60村にわたり、同一仕様の一戸建て住宅110棟を建設。マラリア、急性呼吸器感染症、下痢症の罹患率が高いこの地域で、建築による公衆衛生の改善を目的とし、無作為化臨床試験のための居住空間として展開されている。

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Star Homes, Mtwara, Tanzania
Photo credit: Julien Lanoo

住宅は建築・臨床・社会的視点から設計されており、建築家ヤコブ・クヌーセン、公衆衛生専門家サルム・ムシャム、疫学者ローレンツ・フォン・ザイドリンの主導のもと、建築的アプローチと実際の生活改善がどのように結びつくかを示すものとなっている。展示では写真家ジュリアン・ラヌーによる記録写真と共に、実証データと住民のインタビューが紹介されている。

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Star Homes, Mtwara, Tanzania
Photo credit: Julien Lanoo

さらに住宅部分は2階建構造で基礎面積と屋根面積を縮小し、一体成型のコンクリート基礎と地元の土を用いた埋め戻しによって、材料コストと環境負荷を抑えている。構造体には軽量鉄骨(LGS)を使用し、現地チームが2日以内に組み立てられる設計とした。壁は中空構造で、セメントレンダーをワイヤーメッシュで仕上げており、通常の住宅よりも70%少ないコンクリート使用量と40%少ないエネルギーで施工可能となっている。加えて、省燃料ストーブ、遮光と防虫機能を兼ねたシェードネット、自然換気による室温低下、太陽光発電による照明とUSB充電、雨水貯水タンクによる飲料水供給など、生活の質を向上させる設備を備えている。

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Star Homes - Design Strategies
Photo credit: Ingvartsen Architects

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Star Homes, Mtwara, Tanzania
Photo credit: Julien Lanoo

建設はすべて現地資材と現地労働力で行われ、地域に新たな技術と職業訓練の機会を提供している。基礎やフレーム、外装パネルは再利用またはリサイクル可能で、建物の寿命を超えた後も循環的に活用できる。居住者の選定は2019年の事前調査と公開抽選によって行われ、2021年6月の完成後、家族は3年間の追跡調査に参加。建築家・社会学者・昆虫学者による多角的調査とあわせ、健康と建築の関係性を実証するデータが収集されている。この取り組みは、住宅の質が健康に直結することを明確に示す実例であり、サブサハラ・アフリカ全域での展開も視野に入れたモデルケースとなっている。

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Star Homes, Mtwara, Tanzania
Photo credit: Julien Lanoo

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Star Homes, Mtwara, Tanzania
Photo credit: Julien Lanoo

スター・ホームズ*・プロジェクト

サハラ以南のアフリカの農村地域に住む人々の健康増進のために、斬新で低コスト、快適で防虫性の高い住宅を開発する方法を模索し、10年以上にわたって開発が続けられてきた。このプロジェクトは、マラリア、呼吸器感染症、下痢の発生率が高い、タンザニアの中でも特に開発が遅れている地域のひとつであるムトワラの農村に、60の異なる村に建設された110棟の同じ一戸建ての「スター・ホーム」で構成されている。これらの住宅は治験の基礎となるもので、住宅を改善することで家族の健康が改善されるかどうかを示す確かなデータを提供することを目的としている。