和紙の肌理に響く物語の残響 文学と日常から立ち上がる抽象の風景
東京・hide galleryで出口朝子による個展「VOICE」が2025年4月19日から5月11日まで開催される。本展では日々の暮らしや文学、音楽といった私的な感覚の積層から生まれた線とかたちが、和紙や墨、鉛筆などの素材を介して描き出される。シリーズ〈VOICE〉は、オーストリアの作家ロベルト・ゼーターラーによる小説『野原(Das Feld)』に着想を得て始まった。物語では名もなき29名の死者が野原という墓地の中で自らの人生を語ってゆく。生と死をめぐる言葉に対する出口の感応が、言葉に還元できないかたちと線となって現れ、和紙の肌理と響き合いながら絵となった。
出口は日本画を基盤に、和紙や墨、箔、鉛筆などを用いて抽象的な作品を制作する画家。繊細さと大胆さを併せ持つ構成力と、グラフィックデザインの感性を併せ持ち、絵画の領域において独自の表現を展開している。日々の生活や文学、音楽を受容する身体を通して得た感覚を線やかたちへと昇華し、それを誰かに手渡すことを志向している。これまでにも、琵琶湖の光と風景から着想した〈湖、光〉(2016, アートスペース虹)、カナダの小説『The Winter Vault』をもとにした〈いくつかの言葉〉(2024, ギャラリーモーニング)など、文学的な発想と風土的感覚が交差するシリーズを発表してきた。本展は、長年親しんできた京都の空間を離れ、東京のhide galleryという新たな場で空間との対話に挑む展示となる。
出口朝子 プロフィール
1975年石川県生まれ。1997年京都精華大学美術学部日本画専攻卒業。2004年より京都を拠点に、アートスペース虹、ギャラリーモーニングなどで個展・グループ展を多数開催。現在は滋賀県大津市在住。自身の暮らしと感性を起点とした制作を継続している。
出口朝子個展「VOICE」開催概要
日程 | 2025年4月19日から5月11日まで |
会場 | hide gallery |
URL | https://tinyurl.com/j425ra7h |