伝統を大切にしたサステナブル建築
サンジャイ・プリ・アーキテクツが、インド・ラジャスタン州ウダイプールの3,690平方メートルの敷地に建つ、総建築面積20,000平方メートルの21階建て、78戸のアパートメントからなる集合住宅「スクリーン504」を手がけた。各階に4つのベッドルームとリビングスペースを備えたアパートメントが4つずつ配置され、周囲に隣接する2面を見渡すことができるように設計されている。
この地方の16世紀から17世紀にかけての伝統的な建築には、35度から48度にもなる夏の暑さをしのげるよう、バルコニーに網戸を設置しプライバシーを確保した例が多い。これら伝統的な建築様式をヒントに、各居室の前面にはスクリーン付きデッキとオープンデッキスペースを混在させ、熱の上昇を和らげ、屋内と屋外の間にトランジショナルな空間を生み出している。
各アパートメントには、リビングルームと4つのベッドルームの前に5つのバルコニースペースがあり、開放的なものと伝統的な文様が施されたスライド式の網戸で覆われているものがある。各アパートメントのデッキの1つは高さが20フィート(約6メートル)ある。居住者は天候に応じて高さ10フィート(約3メートル)のシングルデッキと高さ20フィートのデッキを使い分ける。
クライアントの要望と諸ルールにより、3,690平方メートルの敷地に20,000平方メートルの総面積をとることができた。70mという高さ制限と、四方に14mのオープンスペースが義務付けられていることから、高さ70m、平面36m×30mの建物ブロックが必要となった。この制限の中で、アパートメントは最小限の内部循環スペースで設計され、全室が外部の眺望に面しているため、丘陵を見下ろしながら採光でき空気もとおすことができる仕様になっている。
ジム、プール、コミュニティホール、ゲームルームを含むコミュニティスペースは地上階にあり、屋上庭園には屋上テラスが、駐車場は地下1階に配置されている。バルコニーと屋上テラスの全周は、まとめて雨水貯留タンクに排水され、水はリサイクルされてガーデニングに再利用される。これらのシステムを活用し外部からの給水の必要性を減らしている。内壁はすべてフライアッシュ・レンガ、敷地の外周壁と景観スペースには地元産の砂岩が使用されている。建設に必要な労働力はすべて地元で賄った。これらの要素を総合し、この建物を持続可能なものにしている。
スクリーン504は、この地域の伝統的な建築様式からヒントを得て立地と気候に合わせて設計され、その結果、エネルギー効率に優れ入居者に様々な屋外スペースを提供する住宅建築となった。
- Photo credit: MR.VINAY PANJWANI
- Photo credit: MR.VINAY PANJWANI
サンジャイ・プリ・アーキテクツ
サンジャイ・プリとニーナ・プリによって設立。オーストラリア、スペイン、モンテネグロ、アラブ首長国連邦、オマーン、米国ダラスで建築プロジェクトを受注。現在、インドの51都市でプロジェクトを設計している。350の国際デザイン賞を含む475以上の賞を受賞。
受賞歴には、アーキタイザーA+アワード・ニューヨーク2024の年間最優秀サステナブルデザイン事務所賞、WA UKインターナショナル・アーキテクト・オブ・ザ・イヤー2024、ワールド・アーキテクチャー・フェスティバル・シンガポール2023の最優秀完成建築物賞(プロダクション・エネルギー&ロジスティクス)、クリエイターズ・デザイン・アワード・パリ2023の最優秀住宅プロジェクト賞、LOOPデザイン・アワードの最優秀大規模建築事務所賞、ワールド・アーキテクチャー・フェスティバル・リスボン2022の最優秀住宅プロジェクト賞、リーフ・アワード・ロンドンの最優秀インテリア・プロジェクト賞2021などがある。
現在108名のスタッフを擁し、その設計哲学の真髄は、文脈に即した持続可能な設計ソリューションを進化させること、そして新しい設計の方向性とともに空間認識を探求する空間を創造することにある。