インテリアとエクステリアが緑で繋がる空間デザイン

チュニジアの首都チュニスに開発された不動産プロジェクト「Domaine de l'Anse Sauvage」は、マルセイユのベ・デ・シンジスビーチを対岸に見下ろすガマルト海岸の丘に建設される。住居の75%からは海を望むことができ、屋上菜園からは、海岸と地平線、そして森を見下ろすことができる。フィリップ・ベリエール・コレクティブ(PB+Co) が手掛けたこのプロジェクトでは、空間づくりの過程で建築がその役割を拡張し、「第二の自然」となることを目標としている。また、当プロジェクトは、建設による生態系破壊の深刻化を最小限に抑えるとともに、損失の補てんを可能にするものでもある。自然との新たな関係性を築くことで、ゆがめられた生態系とのバランスを取り戻していくことが狙いだ。

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Building A - Typical Bloc -NNE façade - (Direct view on the bay), Photo credit: image Philippe Barriere Collective (Mamary Coulibaly, Farouk Dine, Mohamed Yahmadi, Philippe Barriere)

緑化パフォーマンス

まずは、生態系の回復のため、地域一帯の緑化が進められた。このプロセスの過程で、それぞれが特有の機能を持ったあらゆるタイプの空間が増設された。ウインター・ガーデン(NNEファサード)をはじめ、増設された空間にはたくさんの在来生物が生息できる環境が造られた。また、開廊や屋根、菜園など、あらゆる空間が緑を携えることで、自然の要素を補充している。当地所の70%(内、54%は植物園、16%は家庭菜園)は植生地帯となっており、残りの30%は、164戸の住居(屋根の50%は緑地)である。植物園には、絶滅危惧種や、土壌を整え、湿度を保つための多様な「ドライプラント」(乾燥地帯で生息する植物)が生息し、生態系の回復に貢献している。

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Building B (NNE Façade) - Private roof + solar collector), Photo credit: image Philippe Barriere Collective (Mamary Coulibaly, Farouk Dine, Mohamed Yahmadi, Philippe Barriere)

海岸との境目にコンクリートを建設せず、居住空間を携えた浸透性のある層を構築。インテリアと植物園とが境目なく連続して存在することで、開放的なライフスタイルの提案が可能となり、環境保護への包括的なアプローチに繋がっている。ビザンチンとイスラム庭園のエッセンスを取り入れたデザインは、内側と外側の境界をあいまいにする様々なスペースを提供し、「第二の自然」としての建築の役割を形作っている。ウィンターガーデン(アコーディオンドアを構えたNÉファサードが庭園を育む役割を果たしている)、ガナリア(南のファサード。格子窓が生物気候学的なバッファーとなっている)、緑化した開廊テラス(外側に二重のレールカーテンを設置)、緑化したルーフガーデン、家庭菜園(植物のカスタマイゼーションを可能にし、多様化を促す)、などが植物園と建築の相互補完的な関係を構築している。

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Ganaria (south façade, double skin serving as a bioclimatic buffer space with moucharabieh), Photo credit: image Philippe Barriere Collective (Mamary Coulibaly, Farouk Dine, Mohamed Yahmadi)

ダブルスキン

外壁と内壁の間は、方位、ロケーション、傾斜、透視図における位置などにより、機能を変化させるダブルスキンで構築されている。ダブルスキンとは、外的要因(環境、季節、卓越風、湿度など)と内的な要求に対応できる下記の機能を持った、臓器のようなものである。

  • 気象変動に耐えうる、生物気候学的な機能
  • 家の中心(リビングルーム)を外に転置することでスペースの連続性を生成
  • ウィンターガーデンの植物を利用して、外の庭とインテリアに連続性を持たせる
  • 全体像と連動することで、インテリアに視覚的な広がりを持たせる
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Building A (NNE facade), Photo credit: Philippe Barriere Collective (Mamary Coulibaly, Farouk Dine, Mohamed Yahmadi, Philippe Barriere)

植物園

植物園は、建物の建築により破壊された既存の生態系やビオトープの再生を助け、自然な環境で野生の在来植物が生息できる保護地区である。再び導入された植物は、気候の変化に対応し(無水栽培)、風に強く(サイプレス)、土壌の湿度を保ちながら土壌侵食のペースを緩める働きがあるものを選んだ。年4回のメンテナンスを必要とするこれらの植物を育てることで、他の絶滅危惧種保護のための研究にも役立てることができる。

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Botanical Garden, Photo credit: Philippe Barriere Collective (Philippe Barriere)

フィリップ・ベリエール・コレクティブ(PB+Co)について

フィリップ・ベリエール・コレクティブは、郊外化、州間高速道路網などのプロジェクトに加え、ホームレス問題、難民キャンプ、医療危機など、社会的・人道的課題にも積極的に取り組む、建築家の専門組織。近年は、マグレブのハイブリッド建築のコンセプト構築などを手掛けた。当組織を率いるのは、建築家兼アーバンプランナーのフィリップ・ベリエール。Ecole des Beaux-arts in Parisを卒業し、Paris Urban Planning Instituteで修士号を取得。Pantheon-Sorbonne大学のアートヒストリー博士号、NYのPratt Instituteで建築の修士号を取得している。フランス、ベネズエラ、サウジアラビア、フランス領西インド諸島などグローバルに活躍しており、国連のボランティア活動やケニア、ハイチ、チュニジアのNPOの活動にも参加している。2006年には、フランスの文化遺産の豊かさに貢献したとして、フランス文化庁より賞を授与されている。手掛けた多くのプロジェクトは書籍化され、多くの賞を受賞している。