MAYUアーキテクツによるプロジェクト「台湾ピントン図書館のリノベーション」
MAYUアーキテクツが手掛けた「屏東(ピントン)図書館」は、台湾屏東市のミレニアム・パークの中に1983年に建てられたカルチャーセンターを、増設・改築して新たなカルチャーハブとなる図書館を建設するプロジェクト。プロジェクトの主な目的は、閉鎖的でランドスケープの弊害となっていた既存の建物を、透明性と利便性を兼ね備えた活気あふれる空間へと変身させることだった。
都市スケールの増築
まず、ガラス張りで透過性の高い新しいロビーが既存の建物の西側に増設された。ロビーがここに設置されることで、建物の主軸が90度回転し、図書館の正面が市街地を向くことになる。堅苦しいプラザや通りを抜けて図書館に到達するのではなく、緑に囲まれた森やアーケードを通って図書館へ入る、この新しいアプローチは、現代の図書館にふさわしい、精神的コンディションを整える調和的なものとなっている。
平行四辺形のロビーは、連続したV字のスチール構造で支えられている。シーティングエリアや中二階スペース、吊り下げ式照明などで構成された「アクティビティアイランド」が各所に設置され、ここで繰り広げられる様々な活動の様子が外からよく見えるように、巨大なカーテンウォールが中と外の境界線を薄める役割を果たしている。
建築スケールの改築
従来のエントランスロビーは、木目調の読書スペースへとリノベーションされた。そして3階分を占めていた書庫を、明るい多目的アトリウムへと改築。様々な機能が分断され、混沌としていた空間が、流動的で個性を持った空間へと様変わりした。螺旋状と幅広の2種類の階段が、多様なシーティングエリアや選択肢を提供しながら、利用者の移動の道筋を完成させている。公園の中、という恵まれた立地を活かしながら、自然素材を利用したオープンフロアのスペースに、図書館の各設備や家具が設置されている。個別性と柔軟性が保たれた居心地の良い温かみのある空間は、まさに現代の図書館に求められる重要な要素である。
外観は、既存の建物を白いアルミニウムのパネルとルーバーで覆い、かつてのエントランスから伸びたアーケードが、劣化したエントランスプラザを改装した読書スペースと庭とを繋いでいる。新たなランドスケープデザインにより、図書館が周囲の公園とシームレスに調和し、利用目的に関わらず、建物へのアクセスを容易にしている。今後は、より多くの市民がこの新たなパブリックスペースを訪れることが期待される。
MAYUアーキテクツについて
MAYUアーキテクツは、台湾の高雄市にある学際的な建築事務所。1999年にMa-Lone Changアーキテクツとして設立され、後にMa-Lone Chang and Yu-lin Chenアーキテクツに改名した。