バルセロナのデザインスタジオEl Equipo Creativoによる地中海のエッセンスが散りばめられたインテリア

スレート張りの道路、海に面した青い窓、港に揺れる船、通りに散りばめられた籐細工。デザインスタジオEl Equipo Creativoが手掛けた「Compartirレストラン」には、ダリが愛したカダケスの街の風景と芸術的精神が再現されている。ダリの町として有名な、そしてレストラン発祥の地である地中海の町「カダケス」のエッセンスを、バルセロナにオープンした新しいレストランのコンセプトに取り入れることが、レストランCompartirのシェフたちの要望だった。絵画的なテーマに現代都市の視点から再解釈を加えたデザイン。そこにカラフルな料理が融合し、地中海のエッセンスを存分に感じられる空間が完成した。

DINING AREA. White textured surfaces generate a warm, light materiality with a general handmade touch. Photo credit: Adria Goula

空間デザインのソリューション

新しいレストランは、バルセロナの中心にあるアシャンブラ地区の鉄骨構造建築にオープンした。前世紀初頭に建てられた壮大かつクラシックな建物は、この界隈ではおなじみの大きな抽象画が並ぶアートギャラリーを彷彿とさせる空間だ。

DINING AREA. An ample white space presided over by an abstract pictorial "window": a painting representing Cadaques's bay. Photo credit: Adria Goula

白を基調とした広々とした空間に、地中海に面した3つの青い抽象的な「窓」（彫刻、絵画、テキスタイル）が配置されている。それぞれの「窓」をきっかけに、地元のアーティストとコラボレーションしたカスタムメイドの作品が、この空間のために制作されている。

ENTRANCE VIEW.
The grey slate stone, together with the natural terracotta tile colour, in contrast with the intense blue, creates a powerful set that can be read in pictorial terms. Photo credit: Adria Goula

機能性

鏡と籐の仕切りの曲線は、空間に点在する暖かな光のランプに変換されている。これにより、シェフの優先事項のひとつであるテーブルのプライバシーが確保され、さらに空間に温かみが加わる。この仕切りの曲線は、カダケスの湾を参考に、その帆や船の風景を抽象的に再現している。バーとキッチンはシンプルで大胆な形状で、レストランのさまざまなエリアを活性化するエネルギー発信地となっている。

The curved shapes of mirrors and wicker dividers recreate an abstract landscape of sails and vessels, Photo credit: Adria Goula

THE BAR. A blue sculptural "window" with a surreal touch, referencing Dali's town. Photo credit: Adria Goula

マテリアリティとサステナビリティ

デザインプロセスには、スペイン地中海沿岸、特にカダケスの伝統的でローカルな建築技術や素材に関する徹底的なリサーチが伴っている。籐、スタッコ、セラミックタイル、スレートストーンなどを、現代的な視点から再解釈し、予想外の斬新な使い方でデザインに取り入れている。その目的は、空間に温かく軽い素材感をもたらすことであり、手作りのタッチで仕上げられた一般的な白い質感の表面に変換されている。スレート石のグレートーン、それを設置する際に採用されたトレンカディス（地中海の伝統的な技法）、テラコッタタイルのナチュラルカラー。これらが、窓の抽象的で強烈なブルーとの対比で強調され、絵画的で力強いセットの中で料理の色と質感と対話する。さまざまな天然素材が、レストランとカダケスの建築的景観を結びつけ、地中海のフレーバーを提供する。

ENTRANCE VIEW. The grey slate stone, together with the natural terracotta tile colour, in contrast with the intense blue, creates a powerful set that can be read in pictorial terms. Photo credit: Adria Goula

The open kitchen, with a simple shape and a bold colour, is one of the protagonists of the dining room, together with the blue pictorial "window". Photo credit: Adria Goula

材料はすべて地元で調達し、デザイン要素もすべて地元で生産することで、長い輸送ロジスティクスを避け、地球を助けるための小さなジェスチャーとしている。地元の小さなブランド、建設会社、アーティスト、職人とのコラボレーションは、すべてのプロセスを合理化し、共同作業を行うための最良の選択肢となった。

Mediterranean materiality, Photo credit: Adria Goula

THE KITCHEN. The open kitchen performs as an energy node activating the different areas of the restaurant. Photo credit: Adria Goula

EL EQUIPO CREATIVOについて

EL EQUIPO CREATIVOは、バルセロナを拠点に、ホスピタリティ、ガストロノミー、ブランドスペースのデザインを専門とするインテリア建築スタジオ。2011年、建築家のOliver Franz Schmidt、Natali Canas del Pozo、Lucas Echeveste Lacyによって設立。空間デザインは、しっかりとしたコンセプトのもと、ストーリーを伝え、人々をインスパイアするものでなければならないという考えを共有してプロジェクトに取組んでいる。ミシュランの星付きレストランをはじめ、世界の名だたるシェフたちの仕事を手がけている。

その作品は、世界中の何百もの出版物に掲載され、ホスピタリティデザインの「アカデミー賞」と言われるレストラン＆バーデザイン賞、世界で最も革新的で概念的なデザインを表彰するFRAME賞、インテリアデザイン誌NYのBOY賞など、70以上の国際デザイン賞で評価されている。スタジオの軌跡と方法論が評価され、Interiors Practice of the Year賞（WIN賞）、Firm of the Year賞（The American Architecture Prize）も受賞している。デザイン誌『FRAME』の、世界で最も影響力のある20のデザインのひとつとしてスタジオの作品が選ばれている。