Provencher_RoyとYelle Mailléにより、築およそ100年の病院に近代的デザインの最先端施設が増設

モントリオールの建築事務所、プロヴァンスロイ(Provencher_Roy)とイエル マイエ(Yelle Maillé)が共同で行った、ケベック州最大の病院「サクレ・クール・ド・モントリオール病院」のプロジェクトは、1927年に建てられた歴史的建築物に明るく近代的な棟を増築し、病院のイメージを刷新した。

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Photo credit: Olivier Blouin

当院は、1972年完成当時は結核の治療を主とした療養所として機能し、それから約100年経った今は、モントリオールの主要な外来診療センター、高度に専門化された外傷センターとして、医療インフラの重要な一翼を担っている。

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Photo credit: Olivier Blouin

しかしその名声とは裏腹に、ここ数十年は施設の老朽化に悩まされてきた。そしてついに、物理的・機能的な欠陥が、病院の使命を果たす妨げになるほどに状況は悪化。この問題の解決に、病院は伝統的な構造を補完しつつ、最先端の医療空間を作り出す拡張工事の設計を計画した。そして、公共施設の空間デザインに定評のあるProvencher_RoyとYelle Mailléにプロジェクトの依頼をしたのである。

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Photo credit: Provencher_Roy & Yelle Maillé

L字型の新棟には、外傷センター、母子病棟、内視鏡部門、循環器部門、医療機器再処理部門が設置された。この新しい棟は、既存の施設と細心の注意を払って一体化され、病院施設としての一体感を維持しながら拡張されている。

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Photo credit: Olivier Blouin

上層階には患者治療エリアがあり、カーテンウォールの外壁には歴史的な病院の建物と同じ石積みが縦長の帯状に施され、ファサードにリズム感を与えている。待合室、ラウンジ、カフェ、その他のセミパブリックエリアからは、敷地や元の建物を一望することができ、ガラスに囲まれた下層階の上に浮かんでいるように見える。自然光と緑豊かな自然を最大限に取り入れた設計により、静かで快適な空間を提供し、非施設的な患者体験を実現している。

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Photo credit: Olivier Blouin

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Photo credit: Stéphane Brügger

日光の治療効果

もともと療養所として建設された当院は、患者の治療の基本と考えられていた「太陽光」を活かす設計になっていた。現代医療でも、自然光や自然景観は、患者の体験や士気を高めるために重要な要素であると認識されている。

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Photo credit: Stéphane Brügger

LEEDの厳しい環境基準を満たすガラスカーテンウォールを採用した建物は、周囲に開放感を与え、自然光で満たされるように設計されている。拡張工事は、キャンパススタイルのデザインを採用し、患者の体験を中心に展開するように植栽と建築エリアを織り交ぜて配置している。新しい庭園は、患者、医師、訪問者、スタッフが静かに瞑想し、自然光を浴びて休息するための空間を提供する。

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Photo credit: Stéphane Brügger

上層部では、石造りの壁とカーテンウォールを垂直に交互に配置し、伝統的な建物の窓割りを、現代的に再解釈したデザインとなっている。このアプローチにより、新しい建物は周囲の環境と一体化し、建物からキャンパス全体を見渡すことを可能としている。さらに、外からは自然光を最大限に取り込むことができ、最適なエネルギー性能を実現している。

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Photo credit: Olivier Blouin

「生きるヒント」に繋がる、遺産を尊重した現代的な解釈

上層階の診療エリアは、建設当初の石積みをイメージした素材のものを採用。内装は、木などの温かみのある落ち着いた素材が特徴で、病院ならではの衛生面や清掃設備にも対応している。

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Photo credit: Olivier Blouin

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Photo credit: Provencher_Roy & Yelle Maillé

歴史的建造物と現代的な棟を結ぶ長い通路は、患者や職員のシームレスな動線を保証するものである。エントランスから見えるエレベーターや建物に直接組み込まれた案内表示によって、他のパビリオンの医療スペースにアクセスすることができる。

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Photo credit: Stéphane Brügger

エントランスは、光に包まれた心地よい玄関に面しており、様々な部門の専門家や学生、患者が気軽に集まれる場所として設計されている。このエリアは、到着したことを印象づけると同時に、医師や看護師など病院スタッフのワークプレイスを向上させるために必要なリラックスや休憩の場にもなっている。

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Photo credit: Stéphane Brügger

今後の発展に対応可能な柔軟性

今回の増築施設は、医療需要の増加に伴い、将来の拡張にもシームレスに対応できるように設計されている。

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Photo credit: Olivier Blouin

プロヴァンスロイについて

プロヴァンスロイは、30年以上の経験を誇る、カナダを代表する建築デザイン事務所。建築、都市計画、都市デザイン、ランドスケープ、インテリアデザインなどを手掛ける。多分野の専門家350名ほどを抱え、研究所や教育機関、交通機関、複合施設など実現したプロジェクトは多岐にわたる。サステナブルで革新的な取組みが、カナダ国内だけでなく世界的にも評価され、170以上の賞に輝いてる。


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