都市建築の未来を形づくる自然の力を再定義する10年の軌跡
日豪建築家のKoichi Takada(タカダ・コウイチ)は、過去10年にわたるスタジオの仕事の進化をまとめた新著『Naturalizing Architecture』をリッツォーリ・ニューヨークより刊行した。本書では、都市環境の中に自然を再び取り戻すというタカダの一貫した建築的使命を軸に、ウェルビーイングや持続可能性、そして感情的なつながりを重視した建築のあり方を探る。
シドニーを拠点とするKoichi Takada Architectsの創設者兼プリンシパルとして活動を始めて約20年。タカダは、有機的なフォルムや自然素材を現代的なデザインと融合させた建築で国際的な評価を確立してきた。その建築は、高密度な都市空間の中に自然のもたらす回復力や安らぎを再現し、環境問題と現代都市における人間の分断という課題の双方に応答している。
本書では、ブリスベンの「Upper House」、オーストラリア・バルモラルビーチの「Palm Frond Retreat」、上海の受賞作「Solar Trees Marketplace」、アブダビの「Mamsha Palm」など、世界各地で手がけた近年の代表作を厳選して紹介。豊富な建築写真や図版、自然からのインスピレーションを示すビジュアルを通して、各プロジェクトに通底するタカダ独自の設計思想が明らかにされている。
タカダの建築は、日本的な抑制と、既存の建築的ルールをあえて逸脱する姿勢が共存する点に特徴がある。それは、現代都市における自然の役割を改めて問い直す契機を観る者に与えるものだ。タカダは、建築は単なる機能性にとどまらず、人を鼓舞し、つなぎ、自然とのバランスを回復する存在であるべきだと語る。

Upper House (Brisbane, Australia) rooftop amenities shaded by a timber canopy.
Photo credit: Scott Burrows
全240ページにわたる『Naturalizing Architecture』には、建築評論家フィリップ・ジョディディオによるテキスト、カルティエ現代美術財団のキュラトリアル・アフェアーズ・ディレクターであるベアトリス・グルニエの序文、そしてタカダ自身による後書きが収録されている。本書は、タカダの活動における新たな段階を示すとともに、現代建築を代表する独創的な存在としての評価をいっそう確かなものにしている。
Koichi Takada
ロンドンのアーキテクチュラル・アソシエーション・スクール・オブ・アーキテクチャー(AA)を卒業後、2008年にオーストラリア・シドニーにて建築設計事務所「Koichi Takada Architects」を設立した。東京、ニューヨーク、ロンドンでの居住経験を通して、都市環境に自然を取り戻すという建築的アプローチを成熟させてきた、新世代の建築家の一人である。
タカダは、日本的な感性をオーストラリア建築に持ち込み、有機的なフォルムと人間の体験への配慮を軸に、ひとつひとつのプロジェクトに自身の思想を反映させている。数々の受賞歴を重ねるなかで、その活動は国際的な評価を高め、現在ではオーストラリア、日本、中国、中東、ヨーロッパ、アメリカと、世界各地でプロジェクトを展開している。
タカダの関心の中心にあるのは、自然とのつながり、そして都市環境を人間的かつ自然なものへと変えていくことだ。地域の風景や歴史、文化に呼応する建築を志向し、自然との繊細な関係性を受け入れ、促すことで、使い手の感情に訴えかける空間を生み出している。ポスト・コロナの時代において、建築を「自然化」することこそが未来への道筋であり、それが次世代を力づける新たな始まりになると、タカダは確信している。

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