グルノーブル都市圏における科学文化の現代的ショーケース
アルカン・アーキテクツ(フランス)とカルダン・ジュリアン建築事務所(カナダ)が、センター・ドゥ・サイエンス・コスモシテ(Centre de sciences Cosmocité)を完成させた。コスモシテは、フランスのイゼール県ポン・ド・クレのグラン・ムーラン・ド・ヴィランクール遺産に建設された新しい科学センターである。
建築家ジャン=イヴ・ギブルデンシュとジャン=フランソワ・ジュリアンが、ラ・ケースメイト(科学博物館)と関連するコミュニティとの緊密な協力のもと、舞台美術デザイナーであるカナダ・モントリオールのスタジオ、クレオが開発したミュージアムのコンセプトに沿って設計を考案した。コスモシテは、19世紀から20世紀にかけて、エチロール市とポン・ド・クレ市の産業遺産と人的遺産の重要な一部であったグラン・ムーラン・ド・ヴィランクール遺跡の産業記憶を保存することを目的としている。
建築家たちは取り壊された建物の配置はそのまま利用し、この地域の産業の歴史を白のヴォリュームで、また新しく建造する施設による現代的なアプローチを黒のヴォリュームで表現した。
半透明で光沢のある白いヴォリュームには通路と関連スペースを、マットで不透明な黒いヴォリュームにはプラネタリウム、イマージョン・ルーム、常設展示室など、科学的コンテンツの普及に特化したすべてのスペースが配置された。宇宙の大いなる謎と人類の宇宙における位置を想起させる黒いヴォリュームの一枚岩、暗く神秘的な質感は、見る者にそのスケールの大きさを理解させ、その無限の広がりに思いを馳せるよう誘う。内部には縦横に広がる回廊に自然光が降り注ぎ、周囲の風景が見渡せる。広がりのあるデザインは建物の機能を反映し、この場所の世界的なメッセージである「誰にでも歓迎され、開かれた科学」を体現している。
プラネタリウム
円形で10度の傾斜を持つこのスペースは、視覚に適応した待合室と音響エアロックを介してアクセスが可能。定員は80名(うち4名は足の不自由な方)で、リクライニングシートを備え、直径13メートルの半球体スクリーンを360度見渡すことができる。円形のテクニカル・ギャラリーとデータセンターが併設されている。
インタラクティブな常設展示デザイン
建築チームは、先出のスタジオ・クレオにコスモシテの舞台美術の制作を依頼。この野心的なプロジェクトの数多くの要件を満たすために、クレオは学際的なデザインチームを編成し、グルノーブルを拠点とする科学委員会やグルノーブル科学・技術・産業文化センターと緊密に協力した。コスモシテは地球はユニークか、すべてを予測することは可能なのか、などの基本的な問いに答えられるよう、インタラクティブな展示としてデザインされている。星の誕生から地震の原因まで、2フロアにわたって展示されており、さらに高さ14メートルのフーコーの振り子が建物をまたぎ、地球の自転を実演している。
バイオクライマティック(生物気候学的)・デザイン
建物は、西に面した庭と東の前庭の空間のバランスをとるように設計されている。ホールと階段はガラス張りになっており、太陽光を取り込み、一般の人々が階段を使って上層階へ上がるよう促している。ガラスにはスクリーン印刷されたシートが貼付されオーバーヒートを防ぐ仕様になっている。夏の暑さ対策として、熱に不活性なセメント構造、効率的なソーラープロテクション、自然換気口の確保、流量とフィルター調整による空気の質の確保などを採用している。
エネルギーの最適化
エネルギー効率を高めるためには主に建物の熱的要求を減らすことが有効で、これはコンパクトな構造と高性能な外皮によって可能になる。建物の主構造は鉄筋コンクリートで、熱橋とそれに伴う結露のリスクを排除し、夏の快適性を追求し外から断熱されている。建物外壁の性能は、フランスのエネルギー規制値を大幅に下回るように設計されている。暖房は地域暖房システムによって、冷房はヒートポンプによって供給される。
景観
建物の東側には、サン・アンドレ通りを見下ろす石造りの都市型前庭があり、訪問者のために開放されている。西側には、駐車場と科学センターとの間に緩衝地帯を形成する庭園と屋外水浴場がある。南側には、樹齢100年の杉の木が保存され、街の継続的な再生を思い起こさせる。
アルカン・アーキテクツ
建築家であり、都市計画家であり、経済学者でもあるアルカン・アーキテクツは、ゼネラリストとして、民間・公共部門を問わず、あらゆる規模の業務に対応している。1986年の設立以来、グルノーブルを拠点とし、その強みは、最初のスケッチから引き渡しまで、建築プロセスのあらゆる段階でクライアントをサポートする、才能豊かで創造的なチームにある。新築と修復の両方における豊富な経験に裏打ちされた、納期、コスト管理、現場監督に対する厳格なアプローチで知られる。各プロジェクトは、創造性と革新性によって推進されるユニークな冒険として構想され、常に持続可能で資源効率の高い方法で実施される。
カルダン・ジュリアン
1992年にモントリオールで設立された建築事務所。公共および民間セクターの大規模プロジェクトを企画・プロデュース、地域に貢献する公共施設や文化施設の設計を専門としている。持続可能な開発の原則に基づき、周囲の環境と調和した個性的なデザインを提案している。その耐久性、革新性、美的魅力を通して、人々の心と体に印象を残すことを目指している。