虫展概要

21_ 21 DESIGN SIGHTでは企画展「虫展 -デザインのお手本-」を2019 年11月4 日まで開催中。展覧会ディレクターにはグラフィックデザイナーの佐藤 卓、企画監修には虫好きとしても知られる解剖学者の養老孟司を迎える。

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自然を映し出す存在である、虫。私たちの身近にいながら、実はそのほとんどの生態は分かっていない。虫の色、質感、構造、また習性には、私たちの想像をはるかに超える未知の世界が広がっている。人類よりもずっと長い歴史のなかで進化を続けてきた多様な虫の姿からは、さまざまな創造の可能性が浮かび上がってくる。本展は、知れば知るほど不思議な虫たちを「デザインのお手本」にする試み。

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村山 誠「Curculio camelliae」

会場では、デザイナー、建築家、構造家、アーティストたちが、虫から着想を得たさまざまな作品を展示する。小さな身体を支える骨格を人工物に当てはめてみたり、翅を上手にしまう仕組みをロボットに応用してみたり、幼虫がつくり出す巣の構造を建築に当てはめてみたりなど。一つの虫をじっくり観察したら、その口、目、脚から驚くような工夫が見つかる。あるいは、人間が虫と関わってきたなかでつけた名前には面白いルールがあったりする。

クリエイターが、そして訪れる一人ひとりが、虫の多様性や人間との関係性を通して、デザインの新たな一面を虫から学ぶ展覧会となっている。

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佐藤 卓「シロモンクモゾウムシの脚」(撮影:淺川 敏)

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「虫の標本群」(撮影:淺川 敏)

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阿部洋介+小檜山賢二+丸山宗利「虫のかたち」(撮影:淺川 敏)

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会場風景(ギャラリー2)(撮影:淺川 敏)

展覧会ディレクターメッセージ

この展覧会は、虫をデザインのお手本ととらえて様々な角度から考察し、そこから得られた情報を元に、これからのデザインの可能性を模索し、作品として展示してみようという試みです。人類史を約20万年としても、虫は何億年という単位の永い間、この地球上で繁殖し、激変する環境の中で多様に進化してきました。そしてまだまだ人類が出会っていない虫も多く存在すると言われています。ところが、虫は我々人類の大先輩であるにもかかわらず、ここ東京のような都会ではあまねく駆除する対象になっています。いつの間にか、都会には虫がいてはいけないことになっている。いてはいけないことになっているから、いるとその虫がどんな虫かも見ようとせず、反射的に駆除してしまう。しかし待ってください。それは生き物としての大先輩にちょっと失礼ではないのか。小さな頃、昆虫採集に勤しんだ自分の中のそんな気持ちが、この展覧会を開きたいと思うきっかけになりました。そこで早速、鎌倉に虫塚をつくられた、虫が大好きな養老孟司さんに相談し、展覧会の準備が始まりました。その後、虫を研究している方々のお話を聞けば聞くほど、次々に面白い話が出てきたのです。

虫の世界はとんでもなく面白い。私はこの展覧会の準備を進めながら、さらにそう思うようになりました。彼らがなんでこんなに永い間、生き延びてこられたのか。それだけをとってみても、そこに人類が生き延びていくためのヒントがあるように思えてなりません。この度も多くのクリエイターと共に虫に学び、多様な作品を用意いたしました。身の回りにデザインと関わりのない物事は何一つありません。この展覧会を体験していただき、少しでもこれからのデザインのお手本にしていただければ幸いです。

佐藤 卓

虫展に寄せて

大人にとって、虫はどうでもいいもの、バカにされるものの一つです。でも子どもは虫が好きです。自分より小さいから、親近感がわくのかもしれませんね。

でも虫を見る面白さに気が付くと、やがてやめられなくなります。これをヘンだと思う人も多いでしょうね。でも一度、まさに虚心坦懐に見てみてくださるといいと思います。とても不思議だと思うようになり、惹きつけられてしまいます。

虫が嫌いな人もいます。私はクモやゲジゲジが大嫌いですから、その気持ちはわかります。でも全部がそうじゃないですよ。とくに細部を顕微鏡で見たりすると、ビックリするしかありません。

私たちの感受性は、生きものの三十億年の歴史の中で育ってきたものです。自然を見て育ってきたのですから、その自然と調和しているはずです。

木の枝に葉が付いています。あれはどういう規則で付いているのでしょうか。太陽は東から昇って、ひたすら移動して、夕方には西に沈みます。その間に一本の木が最大限の日照を受けるには、葉をどう配列したらいいのか。いま見ている木の葉の配列は、その問題の解答じゃないんでしょうか。

教育を受けていくうちに、子どもたちは考えることは問題を解くことだと思わされてしまいます。でも話は逆じゃないんですか。生きものは三十億年の間に、ありとあらゆる問題に直面しつつ、それを解いて生き延びてきた。その解答が目の前にある。私はそう思うんですね。見ているのは問題集の答えだけです。では問題はなんだったのか。そんなふうに思いながら虫を見てもらえると嬉しいと思います。

養老孟司

イベント概要

名称:「虫展 ―デザインのお手本―」
会期: 2019 年7月19日(金)→ 11月4日(月・祝)
開館時間:  10:00 – 19:00(入場は18 : 30 まで)
休館日: 火曜日(10 月22 日は開館)
入館料:  一般 1,200 円、大学生 800 円、高校生 500 円、中学生以下無料 
会場:

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2

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