建築とインテリアが融合する批評的空間
東京・青山に2026年4月11日(土)にオープンした韓国発セレクトショップ「WORKSOUT」の日本初フラッグシップストアは、従来のラグジュアリーリテールのあり方に対する明確な問いかけとして誕生した。設計を手がけたのはイタリア人建築家、Andrea Caputo(アンドレア・カプート)率いるスタジオ。建築とインテリアの双方において一貫して提示されているのは、「完成された表象」としての店舗ではなく、時間性や仮設性、そして文化的生産のプロセスそのものを内包する空間である。
青山はこれまで、ファッションメゾンの旗艦店が競い合う舞台として、洗練された素材や強いアイコン性を備えた建築が並ぶエリアとして知られてきた。しかし本プロジェクトはその文脈に対して距離を取りながら、むしろ「工事中」のような都市の過渡的風景に着想を得る。鉄筋コンクリートのシンプルな構造体を、アルミニウム製の足場状フレームが包み込み、さらに大判のテキスタイルが外皮として重ねられることで、建築は完成形を主張するのではなく、常に変化し続ける状態を体現する。
このファサードは、昼間には都市の雑多な視覚環境に溶け込みながら、夜間には照明によって抽象的な光の場へと変容する。存在と後退、構築とイメージのあいだを揺れ動くその姿は、「アクティブな中立性」とも呼ぶべき独自の建築的態度を示している。つまり、意味を積極的に語るのではなく、言語の停止や曖昧さを通じて新たな解釈を誘発する装置として機能するのである。
この思想は内部空間にも貫かれている。一般的なマルチブランドストアが商品を中心に据えた洗練された展示プラットフォームを志向するのに対し、本プロジェクトでは約半分の面積が展示・リサーチのためのスペースとして確保されている。建物は単なる商業施設ではなく、デザイン、建築、視覚芸術に関する実験やキュレーションが継続的に行われる文化的インフラとして再定義されている。
三層にわたるフロア構成では、それぞれにギャラリー的性格を持つ領域が設けられ、リテール空間と意図的な距離を保ちながら共存する。白く光沢のある床面は、インスタレーションや展示のための中立的なプラットフォームとして機能し、その周囲には施工過程を思わせる建築的要素が露出したまま配置される。これにより、空間は完成品ではなく、常に更新されるプロセスの場として認識される。
一方で、周縁部に配置されたリテールゾーンでは、長大な金属製壁面システムに沿って商品が展開される。未仕上げのコンクリートと対比をなすこれらの要素は、商業性と実験性という異なるロジックの共存を可視化する装置でもある。さらに、照明や空調などの設備はすべて足場状フレーム内部に統合され、空間から視覚的に排除されることで、驚くほどの明晰さが確保されている。
建築とインテリアは単なる連続関係にとどまらず、同一の思想を異なるスケールで展開する二重の装置として機能している。外部における仮設性と時間性の表現は、内部においてはプログラムの混成やヒエラルキーの解体として現れ、商業・展示・リサーチが相互に影響し合う場を生み出す。
「WORKSOUT AOYAMA」は、リテール空間を単なる消費の場としてではなく、文化的実践のプラットフォームへと転換する試みである。同時にそれは、都市における建築の役割を再考する提案でもある。完成されたイメージの提示ではなく、未完性や揺らぎを引き受けることで、現代都市にふさわしい新たな空間のあり方を提示している。
WORKSOUT AOYAMA
| 所在地 | 東京都港区南青山3-17-6 |
| オープン | 2026年4月11日(土) |
| URL | https://tinyurl.com/56scsjf4 |

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