建築事務所カルダン・ジュリアン設計のパビリオンが新たな審美性と持続可能性の基準を確立

モントリオール コートデネージュ地区のトライアングル地域で実施されている大規模再開発プロジェクトの一環として、新たに建設されたサイディー・ブロンフマン・パークのパビリオンが公開された。建築事務所のカルダン・ジュリアンが設計したこのパビリオンは、広大な8,600平方メートルの公園内に、樹木園、レクリエーションエリア、自然な広場、活気ある噴水広場などとともに配置されている。

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

パビリオンの建設は、カナダの慈善家であるサイディー・ブロンフマン(1897-1995)に敬意を表して命名されたこの公園に人々が集まれる場所を提供することで、公園と周辺地域とのアイデンティティの結びつきの強化を図ることが目的である。公園の位置や環境を尊重したデザインは、地形と建物を繋ぐ橋の役割も果たしている。カルダン・ジュリアンはモントリオール市と協力し、この種の市営建築物における新たな美的、持続可能性、利用可能性の基準の確立に繋がる大胆なデザインを取り入れた。

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Photo credit: © Vincent Brillant Photographe

地域のニーズに対応できる設計

サイディー・ブロンフマン・パークのパビリオンには、様々なイベントが開催できる大きな多目的ルームとキッチン、読書室、セルフサービス図書館がある。また、管理事務所、洗面設備(外部からも利用可能なものを含む)、メンテナンス機器のためのガレージも備えている。周辺地域の多様な顧客へのレクリエーションサービスの提供は、地元の組織が請け負っている。

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

建物の力強い三角の形状は、トライアングル地区の名前に由来し、ランドマークとして機能しながら、新しいサイトの独自性と調和している。パビリオンの金属ファサードの帯は、地形の多様性とダイナミックに共鳴し合い、まるで建築と自然が対話をしているかのようである。

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

公共空間における持続可能なデザイン戦略

このプロジェクトの目標の一つは、持続可能な開発戦略を市営建物に適用し、公共の場として提供することだった。そのため、建物には利用者が立ち入ることができるグリーンルーフが設置されている。この屋根は特徴のあるデザインとしての美的要素だけでなく、雨水をキャプチャし、熱島現象を軽減する機能的な役割も果たしている。南側ファサードには太陽光発電パネルが設置され、建物に電力を供給する。さらに、新しい斜面を活用して、季節に応じて空気を調節し、自然換気の利用を促進するパッシブ冷房システム(カナディアンウェル)が設置されている。地下には地熱ループがあり、パビリオンの暖房や冷房に利用されている。建物の大きな屋根は、建物周辺に日陰のエリアを提供し、夏季には涼しい室内環境を維持できる。三重ガラスのカーテンウォールにより、豊富な自然光が室内に降り注ぐ。これらの機能的な要素により、パビリオンはエネルギー効率が高く、利用者に快適で心地よい空間を提供できるのである。

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

地域と一体化し活性化に貢献

かつては無機質なエリアであったこの場所だが、今は多くの植物で埋め尽くされた公園となっている。自然の広場とパビリオンのグリーンルーフにより、密集した地域の中に涼しいオアシスが形成されている。本プロジェクトは、魅力的な多目的スペースを提供するだけでなく、産業施設や商業ビルで構成されるこの地区の緑化も進めている。

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Photo credit: © TARMAC - Damien Ligiardi

コート・デ・ネージュ地区の中心地に集いの場を提供することは、地域社会の所属意識を維持し強化することに繋がる。新しいヒューマンスケールのランドスケープは、歩行者、自転車、そして身体的な制約のある人々などに利用できる場所を与える。包括的な公園の開発は、地域に新たなアイデンティティをもたらし、殺風景な産業空間から生き生きとした活気にあふれた空間への移行を手助けしているのである。

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Photo credit: © Vincent Brillant Photographe

Cardin Julienについて

1992年に創設され、モントリオールを拠点とするカルダン・ジュリアンは、公共および私的なセクターで大規模なプロジェクトの設計および実施を手がける建築会社。コミュニティに奉仕する公共および文化施設の設計を専門としている。責任感、創造性、パートナーシップの価値に基づき、環境に統合された特徴的なデザインを提供している。手掛けるプロジェクトを通して、持続可能性、イノベーション、美的魅力によって人々の心に残る仕事をすることをモットーとしている。

国際コンペティションで多数の受賞を誇る。主な文化施設の実績には、リオ・ティント・アルカン・プラネタリウム(カナダ・モントリオール、2013年、Aedificaとの共同設計)、ストラスブール・プラネタリウム(フランス、2023年、Frenak Jullienとの共同設計)、コスモシティ(フランス・グルノーブル、2023年、ARCANE Architectesとの共同設計)がある。