デジタル技術と日本美術体験が融合した展覧会

文化財活用センター〈ぶんかつ〉東京国立博物館(トーハク)は、2022年10月18日から12月11日まで、東京国立博物館創立150年記念 特別企画未来の博物館」を開催する。本展覧会は東京国立博物館の所蔵品を元に制作したデジタルコンテンツ、複製などで構成する体験型の展覧会で、デジタル技術と日本美術のコラボレーションにより未来へとつながる鑑賞体験を実現し、誰もが気軽に日本美術を楽しむことのできる機会となる。

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メインビジュアル

また、「未来の博物館」でとりあげるほとんどの日本美術作品(14件)は、同時期開催の特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」(平成館)や総合文化展に展示される。「未来の博物館」をみたあとに、ホンモノの日本美術をじっくり鑑賞すると、一味違った見え方になるかもしれない。

デジタル技術 × 日本美術体験

夢をかなえる「未来の博物館」。大画面に拡大された絵の中を歩き、屏風に描かれた四季を感じ、光を照らして仏像をじっくりと調べる。最先端のデジタル技術と高精細複製品を使用し、新しい日本美術の鑑賞体験を実現する。想像力が展示室での不可能を可能にする。

「未来の博物館」3つの会場それぞれのみどころ

(1) 時空をこえる8K 本館 / 特別5室 主催:NHK

遠く離れた法隆寺・夢殿の空間や、国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」に描かれた400年前の京の都の賑わいを、大画面に映し出された映像を通して、その場にいるように味わう。そんな時空をこえて文化財と出会う鑑賞体験を、最新の8K映像技術や3DCG技術を用いた“8K文化財”でかなえる。

空間をこえ、奈良の法隆寺・救世観音が目の前に

東京からおよそ400キロメートル離れた奈良に位置し、世界最古の木造建築群を擁する法隆寺。その東院伽藍に、聖徳太子を追慕して建てられたお堂、夢殿(ゆめどの)がある。夢殿本尊である国宝「観音菩薩立像 救世観音(くせかんのん)」は、長い間秘仏とされ、法隆寺の僧侶でさえ見ることはなかった。このコーナーでは、8Kの3DCG技術でとらえた金色に輝く救世観音の姿を、幅13メートルにもおよぶ特大3面スクリーンで観ることができる。遠く離れた地の仏像が、まさに目の前にあらわれたかのような迫力。

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会場イメージ図(8K文化財 国宝「観音菩薩立像 救世観音」法隆寺)<空間をこえた出会い―法隆寺 謎に満ちた金色の秘仏>

時間をこえ400年前の都のにぎわいをそぞろ歩き

国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」は、江戸時代に活躍した絵師・岩佐又兵衛が、約400年前の京都の街並みを俯瞰するかのように描いた大パノラマの絵画。6曲1双の屏風に、武士や商人のみならず、かぶき者や酔っ払いまでじつに老若男女2500人を超える人びとが遊び、暮らすさまが生き生きと描きだされている。幅約10メートルもの超高精細大型ディスプレイに映し出される洛中洛外図屏風の世界。江戸時代にタイムトリップし、活気あふれる京の都を歩いているかのような体験ができる。

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時間を超えた出会い―洛中洛外 400年前の京都へ

(2) 四季をめぐる高精細複製屏風 本館 / 特別3室 協賛:キヤノン

東京国立博物館が誇る4つの国宝、「花下遊楽図屏風」「納涼図屏風」「観楓図屏風」「松林図屏風」は、日本の四季の美しさを私たちに伝えてくれる。屏風の中を歩き、描かれた四季の風景を感じる鑑賞体験を、高精細複製品へのプロジェクションマッピングでかなえる。

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四季をめぐる高精細複製屏風

日本絵画の世界にはいり、描かれた四季をめぐる

春:花下遊楽図屏風 (かかゆうらくずびょうぶ)

江戸時代のはじめ頃のお花見の様子を描いた屏風。映像では桜と海棠が咲きほこるなか、着飾った女性たちの宴が催されるうららかなシーンが蘇る。

夏:納涼図屏風 (のうりょうずびょうぶ)

夕顔棚の軒端の下で満月を眺める三人のもとに涼やかな風があたる、普段の人々の暮らしの中の一瞬の風景が描かれている。映像では夜を迎える風景が映し出され、月の満ち欠けとともに描かれた情景を見てみると、ごく身近にある平穏な暮らしに見えてくるかもしれない。

秋:観楓図屏風 (かんぷうずびょうぶ)

京都洛北の高雄にある清滝川のほとりで、色づいた紅葉を楽しむ人々を描いた屏風。映像では紅葉が風にゆれ、雁がはばたき、雪化粧の愛宕山を背に白鷺が舞い降りる、そんな冬への移り変わりの中で、紅葉と宴を楽しむ人々の姿を見ることができる。

冬:松林図屏風 (しょうりんずびょうぶ)

晩冬の松林が描かれた作品で、日本の水墨画の最高傑作とたたえられている。映像では晩冬の松林の一日が映し出され、朝もやの中から松林が浮かび上がり、陽の光によって松の色が変化し、雪が降り積もり夜を迎える。

(3) 夢をかなえる8K 東洋館 / エントランス 協賛:シャープ

鎌倉時代を代表する仏像の細部の表現を光を照らしてじっくりと調査できたら。名だたる茶人が手にした名碗「大井戸茶碗 有楽井戸」を手に取り、さまざまな角度から眺めることができたら。展示室では不可能な夢の鑑賞体験を、8Kの高精細画像を用いたオリジナルのアプリケーションと操作デバイスでかなえる。

名茶碗を手にとる夢の体験が進化

「大井戸茶碗 有楽井戸(うらくいど)」をはじめとする名碗を、8Kモニターでじっくり鑑賞します。かたちも重さもホンモノの文化財そっくりの茶碗型ハンズオンコントローラーは、まるでお茶碗を手にとって眺めているかのうよう。モニター上に映し出された高精細画像がコントローラーと連動し、360度好きな角度から鑑賞することができる。

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8Kで文化財―ふれる・まわせる名茶碗

大迫力8Kモニターで仏像の調査体験

ガンダーラ、中国、日本を代表する3体の仏像。その高精細3DCG画像を、120インチの大型8Kモニターに映し出す。モニターに近づけば仏像が拡大され、のぞき込めば角度が変わるなど8Kの3DCG画像があなたの動きに連動し、まるで目の前で仏像と向き合っているかのような臨場感あふれる鑑賞体験が実現。

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8Kで文化財―みほとけ調査

特別企画「未来の博物館」開催概要

会場東京国立博物館
会期2022年10月18日から12月11日まで